こんにちは!立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学科3回生のteamRIMIXライター・岡川春乃です。
今回は、モロッコにおけるCOVID-19の状況についてお伝えします。
私は、2019年9月から2020年5月半ばまで、モロッコの首都・ラバトに交換留学をしていました。3月中旬からはロックダウン下での生活もしていたので、イスラーム世界・モロッコにおける新型コロナウイルスの“今”をお届けします。
感染状況
モロッコ保健省の発表によると、2020年6月10日午前10時現在、感染者数は8508名(うち死者211名、回復者7565名)となっています。総検疫数は356,051件です。
モロッコにおける最初の感染者が確認されたのは、3月2日でした。
3月16日にはカフェやレストラン、モスク(イスラーム教の礼拝堂)が閉鎖され、最初の感染者確認からわずか18日後の3月20日には、衛生緊急事態(ロックダウン)が発令されました。
当初、「衛生緊急事態」は5月20日までの1か月間が予定されていましたが、期限満了を前に5月20日まで延長され、更に6月10日、7月10日までと延長され続けています。
発令に伴い、陸海空路全てが封鎖されたので、モロッコは現在も事実上の鎖国状態となっています。
3月21日には国内の鉄道やバスの運行が停止され、その翌日には都市間の移動も禁止されました。4月7日にはマスク着用義務も発令されています。
やむを得ない外出の際には、以下のリンクからダウンロードした特別移動許可証に必要事項を記入し、携帯します。自宅から出て最初に出会った警察、憲兵当局等に依頼すれば押印及び署名をしてもらうことができます。
http://covid19.interieur.gov.ma/
モロッコ議会令によると、このような政府の命令及び決定に違反した場合、1ヶ月から3ヶ月の禁錮及び300DH(約3,300円)から1,300DH(約14,300円)の罰金、又はそのいずれかによって罰せられると規定されています。
また、モロッコ保健省は、6月に入り、「Wiqaytna」というコロナ追跡アプリをリリースしました。
このアプリに登録しているユーザーであれば、新型コロナウイルス感染者との濃厚接触疑いがある場合、接触後21日以内に通知がくる仕組みです。この通知に基づき、必要に応じて保健省が検疫を行います。
https://www.wiqaytna.ma/Default_Fr.aspx
以下のリンクでは、モロッコのリアルタイムの感染状況を確認することができます。
https://infogram.com/evolution-du-covid-19-au-maroc-1h7j4drq7dlv2nr
ロックダウン下のラマダン
モロッコはイスラーム世界に属しています。国教はイスラーム教で、国民のほとんどがイスラーム教を信仰しています。
ラマダンと呼ばれるイスラーム教の断食月に、「衛生緊急事態」の時期が重なっていました。
ラマダン月の開始と終了は新月の観測によって決められるので、国によって日程に若干のずれが出るのですが、モロッコでは4月25日から5月23日までの約1か月間が断食月でした。
ラマダーンの目的は、日の出から日没まで一切の飲食を禁じることで、空腹や自己犠牲を経験し、貧しい人々への共感を育むことです。
また、ともに空腹を耐え抜いた家族や友人たちと、日没後のイフタールと呼ばれる食事を一緒に囲んだり、一緒にモスクへお祈りに行くことで、仲を深めます。
このような家族や仲間との支え合いは、苦しい断食月を乗り越えるためには必要不可欠です。しかし、今年はモスクでのお祈りも禁止、外出もかなり制限されていたので、イスラーム教徒のモロッコ人達にとっては例年以上に厳しいラマダーンとなりました。
モロッコ人たちは、どのようにしてラマダーンを乗り越えたのでしょうか。
私のホストマザーは、昼間からイフタールのために1からホブス(モロッコのパン)を作ったり、ハリラ(モロッコのスープ)の仕込みをしていました。
友人や親戚、海外に留学中の娘さんとも積極的に電話やテレビ電話をして、ラマダンの様子やCOVID-19の最新情報などを伝え合っていました。
例年は、家族や友人たちとイフタールを食べた後、一緒にモスクへお祈りに行きます。
モスクでは、イマーム(指導者)がクルアーンを読んだり、説教をしてくれるそうです。
しかし、今年はそのように過ごすことが叶わなかったので、ホストマザーは家で1人でクルアーンを読みながら、時間をかけてゆっくりとお祈りをしていました。
私が安全に日本に帰れるようお祈りもしてくれていたそうで、毎日安心して過ごすことができました。
衛生緊急事態下での過ごし方
<日本大使館に勤めるモロッコ人女性の場合>1日の過ごし方
- テレワーク
- テレビを見る
- 友達とのビデオ電話
- 日本語の勉強
- 読書
インタビュー
Q.COVID-19は脅威だと感じますか?
A.はい。
Q.人々の様子はどうですか?
A.外出を自粛する人も、マスクを着用する人も増えたと思います。
Q.仕事はどうですか?
A.現在はテレワークの状態が続いていますが、衛生緊急事態が解除されたらまた出勤できるようになります。早く職場に行きたいです。
Q.最近の楽しみは何ですか?
A.楽しいことはあまりないですが、良いことはあります。例えば、以前より家族と過ごせる時間が長くなったり、睡眠時間が長くなったり(笑)
Q.最後に、衛生緊急事態が終わったあとにしたいことはありますか?
A.友達にも会いたいですし、喫茶店やレストランにも行きたいです!あとは、ジョギングもしたいです!
<私の場合>1日の過ごし方
- ホスト大学のオンライン授業
- 読書
- 友人や家族と電話
- ヨガや縄跳びなどの運動
- コロナ日記と感染者推移のグラフ作り
- 夜間:APUのオンライン授業(時差のため真夜中になることもしばしば)
私は、コロナ禍のモロッコで何ができるかを考え、毎日日記をつけたり、モロッコの様子を観察して過ごしました。
セメスターの真っ只中で起きたパンデミックでしたが、ホスト大学のオンライン授業は、衛生緊急事態宣言がなされた1週間後に再開しました。
大学側の対応は早く、留学生ミーティングも定期的に開催されたりと、学生のために尽力してくださりました。
また、モロッコにいる間、家族だけでなく、世界各国にいる友人たちと連絡を取り合っていました。
今思い返してみると、異国で日々変わりゆく状況に戸惑いながらも、「人の力」に助けられていたんだなと実感させられます。
インターネットで世界中が繋がっている今だからこそ、このパンデミックを乗り越えようと思うことができました。
しかし、心が痛んだ出来事もあります。
ある日、COVID-19の影響で消費不振に陥り、野菜の買い手に困っていた少年たちが、大声で客引きをしながら路上販売をしていました。
すると、通りかかった軍が、路上販売は違反だとして、青年たちを連れて行ってしまったのです。
その日暮らしをしている人が多いモロッコにとって、衛生緊急事態がどれだけ厳しい政策なのかを肌で実感した瞬間でした。
まとめ
未だ厳しい衛生緊急事態下に置かれているモロッコですが、新規感染者数は減ってきています。
政府の対応も早く、死亡率も2.5%と低水準で推移していることから、事態収束への希望は確実に見えてきていると言えます。
経済活動緩和の動きもあるので、少しずつ日常に戻っていくことでしょう。
1日も早く、人で賑わっているモロッコをこの目で見られる日が来ることを願ってやみません。
*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。
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