【Global Now-世界の現状#1】ベトナムの新型コロナウイルスの状況を現地の方にインタビュー

2020/05/8

こんにちは!立命館大学経営学部2回生のteamRIMIXライター・藤井はるかです。
【Global Now-世界の現状】では、各国のコロナ対策や状況をまとめたり、実際に現地で生活している方々へインタビュー調査を行ったものをブログ形式にして発信します。

第1回はベトナムの新型コロナウイルスを巡る状況について、経済学部1回生の中島綾花さんと共に、立命館大学理学部准教授で現在JICAに所属しつつ、ベトナムで暮らしていらっしゃる佐藤圭輔先生へインタビュー調査を行いました。

感染状況

新型コロナウイルス感染症予防国家指導委員会の5月5日午前6時時点の発表によると、ベトナム国内の新型コロナウイルス感染者は計271人で、うち221人がすでに退院しているとのことです。

入国者を除く新規感染は19日連続で0人で、これまでに死者は出ていません。

多くの感染者が出た中国が隣国であることを考えると、感染スピードや感染者数はもっと多くなるのではないか、と疑問に思いますが、ベトナムが今回新型コロナウイルスの封じ込めに成功しているのにはいくつかの背景があることがわかりました。

死者ゼロの理由とは?

政府の素早い対応

ベトナム政府は、1月半ばの時点で病院などへの対応の指示を出し早期発見と隔離のための準備を進めていました。
また、武漢で死者が出た段階で国境閉鎖を行い空港の使用も禁止しました。

1月30日にフック首相が流行宣言を発令しましたが、この時点で国内の患者はわずか6名でした。このことからも、感染症の抑制に対する意識が高いことがわかります。

また、入国した外国人の一部はマンションを借り上げて作った強制集団隔離施設に入り、その施設を軍が管理するなど、国内での感染拡大を徹底的に防止しています。

また、佐藤先生のお話によると3月の終わりに発表された首相決定第15号と第16号(社会隔離の実施)で厳しい外出禁止のルールが決定し、4月1日から22日の間はスーパーへの買い出しを除き基本的に外出はできなかったそうです。

日本のように要請ではなく命令のため、タクシーや公共交通も全て停止、外には公安担当者が巡回していて、不要な外出を行うと厳しい罰則(数万円の罰金)が課されていたようです。

ベトナム人の国民性

外出が禁止と言われた際に反発する国民はいなかったのでしょうか?

この答えはベトナム人の国民性を語る「愛国心」「自己責任」「無計画性」という3つのキーワード理解すればわかります。

まず、ベトナム人は歴史的背景などから愛国心がとても強く、政権支持率も8〜9割とかなり高い国です。そのため、政府が決定した事項に疑問を持つことがあまりなく、批判的な意見が出ることもなく、そのまま従う国民性があるそうです。

よりよい解決策を考えるためには議論も大事ですが、素早い判断と解決のためにはベトナムのように強いリーダシップをもつことも必要になってくるのかも知れません。

このような国の事情が功を奏し、今回の新型コロナウイルスの感染防止策でも、政府が決めた素早く厳しいルールに従った結果、感染防止につながったのではないかと考えられます。

また、すべての問題は自己責任だ、という意識も高いといいます。

そのため、社会や国に守ってもらうというよりは自分自身で新型コロナウイルスを防ごうという風潮があるそうです。

もし新型コロナウイルスにかかってしまっても、日本のような医療制度(保険)や施設が保証されていないため、国民は自ら感染しないように気をつけているのだそうです。佐藤先生もベトナムで感染すると大変なことになるから、現在も十分い注意しているとのことでした。

そして、ベトナム人はあまり先の予定を立てたり将来のことを考えたりしない、少し無計画な国民性があるといいます。

言い換えれば柔軟性があるとも読み取れます。

政府による外出禁止のルールが決定するのも、前日や当日の朝だったりするのですが、国民は反発するのではなく「決められた状況の中でベストをつくす」という考えのもと行動しているそうです。

このことも事前にあらゆるパターンを想定し、準備を重ねる日本とは真逆の考え方であることがわかります。

2月中旬の市内の様子。大気汚染の影響でバイクに乗る際は普段からマスクを着用する人が多い

規制緩和の動き

4月22日、フック首相はベトナムにおける社会隔離措置の緩和等を発表しました。
これにより、一部地域を除くハノイ市・ホーチミン市・バクニン省・一部地域を除くハザン省は「感染リスクの高い地域」から「感染リスクのある地域」に引き下げられ、感染防止を確保した上で必需品以外の商品やサービスを取り扱う店の営業を決定しました。

また、それ以外の省市は「感染リスクの低い地域」とされ、必需品以外の商品やサービスを取り扱う店の営業が認められました。

佐藤先生によると、大学は5月からオンサイト授業を再開し、大規模講義を除いて普段通りの授業を行っているとのことです。また、小・中・高も5月中旬から順次再開予定だそうです。

日本との違いを感じたのは、ベトナムでは3月の早い段階で今セメスター(7月まで)の授業を全てオンラインにすると素早く決定し、その後、情勢が良くなったのでオンサイトに戻した点だとのことです。

日本の多くの学校は、オンサイトを原則として置いて、情勢を見ながらオンライン授業の延長・延長を決める感じなので、両国の対応はとても異なっているという印象をもったようです。

経済支援

ベトナム政府は4月10日、新型コロナウイルスの影響で経済的困難に直面している約2000万人を対象に、総額63兆VND(約2900億円)を直接支援することを定めた政府決議を公布しました。

給付の対象となるのは6つのグループで条件や給付内容は次の通りです。

ベトナム政府の経済支援:給付の対象・条件
  1. 革命功労者:月額約2340円、最大3ヶ月
  2. 貧困世帯:月額約1170円、最大3ヶ月
  3. 失業者や解雇された労働者:月額約2670円、最大3ヶ月
  4. 年間売上高が約46万7000円以下で4月1日以降に営業停止した自営業者:月額約4670円、最大3ヶ月
  5. 一時帰休労働者:月額約8410円、最大3ヶ月
  6. 財政難の企業:労働者の給与の50%相当額をベトナム社会政策銀行から無担保、無利子で借入可能

なお、ベトナムの人口は9,467万人(2018年・越統計総局による発表)で平均月収は約27,000円です。

ベトナムは世界でも有数のコメ生産地で、一部の地域では三期作を行っているほど活発。今回の事態にも、無料自動コメ配り機(コメATM)を市内各所に設置して、貧困世帯を支援するなど、ベトナムならではの取り組みも行っているようです。

このように、早くから医療と連携を行い、厳しい水際対策や感染者管理の徹底に加えて、国民の協力を得たことで新型コロナウイルスの封じ込めを成功させることができたように感じます。

もちろん、一党独裁政権だからこそできたのではという意見もあるとは思いますが、的確な行動を起こし素早く行動したことで国民を守ったことに変わりはありません。

インタビューを通して

ベトナムの新型コロナウイルスを巡る状況を知り、日本との違いについてとても考えさせられることが多かったです。
特に、ベトナムの国民性が新型コロナウイルスを抑える要因になっているかもしれないということは知らなかったためとても驚きました。

日本とベトナムは国民性や政治体制が違うため、ベトナムの行動をすべて真似するべきだとは思いませんが、ベトナムのことを知ることができるいい機会になったと思います!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。

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