【Global Now-世界の現状#2】台湾はなぜコロナの封じ込めに成功したのか?

2020/05/17

はじめまして、teamRIMIXライター・立命館大学経営学部2回生の宮川花代と立命館大学文学部3回生の辻明日香です。

私たちは昨年、立命館大学の異文化理解セミナーで台湾に留学しました。

今回は、台湾に住んでいる4名の方へのインタビュー調査を交えて新型コロナウイルスの状況や対策をまとめた現状をお伝えしたいと思います。

留学した際に撮影した台湾の風景

感染状況 

台湾の中央感染症指揮センターによると、5月14日時点で台湾の感染者数は440人、死者数は7人にとどまっています。
感染者数のうち、349人は海外で感染、55人は国内感染、36人は軍艦関係者となっています。
台湾の面積は北海道の半分ほどです。北海道と比較してみると、北海道全土の感染者数は5月16日時点で1006人です。

また、台湾の人口密度は639人/平方キロメートルであるのに対し、北海道の人口密度は66人/平方キロメートルです。
台湾は北海道と比べて約10倍の人口密度であり、より多くの人と接触する可能性があることを考えると、台湾の感染者がかなり少ないことがわかります。

中国との関係も密接であり、人の往来も多い台湾。それにも関わらず、新規感染者は7日連続でゼロ、国内感染者は32日連続でゼロを達成し、コロナ対策の優等生と呼ばれるようになりました。

このように新型コロナウイルスの封じ込めに成功している台湾と現在もコロナと戦いつづけている国々では、何が違うのでしょうか。
では成功に繋がった主な対策を見ていきましょう。

政治による感染対策

台湾は、他国と比べて迅速かつ強力な防疫対策を行ってきました。
まず2019年12月31日に武漢における新型コロナウイルスの集団感染が確認された後、台湾当局はその日のうちに武漢からの全乗客に対する検疫を始めました。
そして2020年1月2日から専門家会議がスタートし、1月20日に指揮センターが設置されました。

台湾では1月21日に初の感染者が発表されましたが、ここまでの段階で読み取れることは「感染者が発表される前に政治による感染対策を始めている」ということです。

ちなみに日本に関しては1月15日に初の感染者が発表された後、1月30日に対策本部初会合、2月16日に専門家会議が開始されました。
さらに台湾当局は2月6日に中国全土からの入境を原則禁止、同日にマスクの購入における実名制を開始しました。
2月25日以降は新学期開始再開に踏み込んでおり、3月19日にはすべての外国人の入国を制限しました。
4月に入ってからは社会的距離の行動指針を指揮センターが発表し、新規感染者0人の日が多く続いています。

このように、政府が主体となり的確な対策を早期から行っていたことが感染者抑制につながったのではないかと考えられます。

経済支援策 

台湾政府は4月21日より、新型コロナによって影響を受けた個人への現金支給が行われてい ます。該当者や金額は下の表の通りです。

該当者 金額 給与回数
低中所得及び弱者(児童、高齢者、身体障害者等) 月1500台湾元

(約5355円)

3か月
タクシー及び観光バスの運転士 月1万台湾元

(約3万5000円)

3か月
水道、電気工事、建築業などの自営業者 3万台湾元

(約10万円)

1回のみ
飲食業、製造業、MICE、観光、文芸産業等の企業の従業員 月給の4割負担 3か月

上記とは別に、新型コロナウイルスの影響を受けた業者も、1回のみ助成金を支給してもらえます。
4月21日だけでも、低中所得及び弱者を持つ約87万世帯のうち約71万世帯に人数分の現金が振り込まれました。

他の該当者にも初日から多くの人にそれぞれの金額が振り込まれ、非常に効率よく経済支援が行われました。
5月1日の時点で経済支援策では320憶台湾元(約1130億円)の現金を給付し、180万人を支援しました。

また、緊急ローン、利下げや家賃に関する優遇策、減税などの負担を軽減しています。
そして、政府は5月以降にも追加の支援を発表し、より多くの人々を支援し続けています。

一般の家庭のみならず、飲食業を含む個人店に対しても十分な経済支援策を行うことで、すべての店が営業停止する環境を整え感染拡大が抑制できたと考えられます。

普段は夜も多くの人で賑わっている様子がわかる

 

現地の方へのアンケート

このような台湾におけるコロナウイルスの現状や対策について、現地の方はどういう思いを持っているのか知るために、アンケートを実施しました。

アンケートに答えてくださったのは台湾在住の現地の方で、20代の男女4名です。
5月13日〜5月14日の間に実施しました。

【質問1】
Q.台湾では外出自粛が行われていますか?

A.外出自粛が行われている(3人)、行われていない(1人)

【質問2】
Q.台湾ではマスクをつけている人が多いですか?

A.(全員)つけている人は多いです

【質問3】
Q.仕事や学校には行けてますか?

A.(全員)行けています

【質問4】
Q.台湾の飲食店での感染症対策はどのようなものですか?

A.店に入る前にアルコール消毒を行い体温を測ります。その際に37.5度以上の人は入店できません。

また、テーブルとテーブルの間は透明なパーティションで仕切られており、机の距離は1.5メートル間隔を保っているそうです。

【質問5】
Q.新型コロナウイルスの感染拡大による変化はありますか?

A.仕事探しが難しい・初めて在宅ワークを経験したなど仕事面の変化や、友達に会うなど遊びの回数が少なくなった・公共施設に行かなくなったなど・手洗いの回数が多くなったなど生活面の変化があったそうです。

また、卒業式がなくなり卒業旅行も行けなかったという方もいらっしゃいました。

【質問6】
Q.今の新型コロナウイルスの現状についてどう思いますか?

A.「台湾にいる私はとても安心しています。全世界のみんな一緒にこのウイルスを乗り越えたいです」
「今コロナウイルスで世界は大変ですが、手を洗ってマスクをつけて、出来るだけ人の多いところに行かないようにすれば、コロナウイルスが収まる日はきっと来ると思います」
「努めて感染対策を維持したほうがいいと思います」
といった意見が出ました。

インタビュー調査から、台湾の皆さんも日本と同じくマスクをつけたり、手洗いを徹底するなどの対策をとっていることが分かりました。
ただ、日本のように緊急事態宣言を発令し、外出自粛を徹底しているわけでは無く、普段どおりの日常生活の上でしっかりとした感染予防をされているということが日本との違いだと分かります。

多くの人がバイクを利用する様子(昨年8月頃に撮影)

インタビューを通じて

台湾は2003年のSARSの感染拡大による教訓を生かし、今の新型コロナウイルスに対しても迅速に対応しているのではないでしょうか。

これほどまでコロナ対策を迅速に進めているのにもかかわらず、WHOは台湾を招待していません。これから台湾がWHOに参加し、様々な政治対策や経済対策について全世界と共有する日が来ることを期待したいです。

 

*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。

参考文献