こんにちは!立命館大学政策科学部3回生のteamRIMIXライター・池田妃奈です。
私は2020年2月からの1ヶ月間、イタリア北部のロンバルディア州に交換留学生として滞在していました。ここは現在、イタリア国内での新型コロナウイルス感染者数が最も多い地域です。夏まで留学予定でしたが、やむなく帰国の決断をしました。感染が急激に拡大していく中での生活の変化は目まぐるしく、忘れがたい記憶です。
今回は、そんな私にとって特別な経験をさせてくれたイタリアについて、新型コロナウイルスの感染情報や経緯と、友人へ行ったインタビューをもとにお話ししたいと思います。
感染状況
イタリア政府の保健省(Ministero della Salute)によると、5月24日時点での感染者数は5万7752人、死者3万2735人、回復者13万8840人になっています。一時はその死者数が中国を越し世界で最多となったことから、「欧州の武漢」とも言われていました。現在の累計死者数もEU加盟国内では最多で、本当に信じがたい数字です。
また、イタリア国内の1日当たりの新規感染者は6000人を超えていた3月中旬をピークに減少しており、現在は8日連続で1000人を下回っていますが、まだ完全な収束とは言えません。
中国・武漢から始まった新型ウイルスの感染は、次第に日本のクルーズ船や隣国の韓国へと拡大し、2月末までは感染者のほとんどがアジアでした。ではなぜ、遠く離れたヨーロッパの中で、イタリアが最初の大規模感染国となったのでしょうか。
感染拡大の経緯
イタリアでの最初の感染者は、1月末のローマで、武漢から入国した中国人観光客2人でしたが、その後の検査や中国との航空便を禁止するなどの素早い政府の対応により、彼らとの接触による新たな感染はありませんでした。
そして3週間後の2月21日、ロンバルディア州で中国への渡航歴がないの男性の感染が発表されました。
翌日、私の通うベルガモ大学からは、2月23日からの一週間の休校の連絡がありました。ちょうどその日私は、ルームメイトと水の都ヴェネツィアに訪れており、開催中のカーニバルは人があふれ大賑わいだったので、突然の報告に戸惑いました。しかし次の日カーニバルが中止になったことを知り、事の重大さを初めて感じました。
その後わずか一週間以内に、3人だったイタリア国内の感染者は888人にまで上りました。なぜたった一週間で爆発的に感染者数が増加したのでしょうか。
現地当局によると、21日に感染が確認された男性の中国への渡航歴がなかったことから、彼が来院する前から感染は始まっていたことが予測されています。実際、訪れた病院では数日前から肺炎の症例があったようです。
つまり、“2月時点で国内感染拡大が既に始まっていた”といえます。この事実がその後のイタリアに大きく影響します。
イタリアの文化と感染拡大のつながり
マスクの表すメッセージ
では少し時を戻して、私がイタリアに到着した日のことをお話しします。空港で私はWi-Fiスポットを探していたのですが見つからず、空港職員さんに尋ねました。
すると彼女は即座に手で口をふさぎ、私から一歩遠ざかり、指で方向を指さすだけでした。その時私はマスクをしていました。
そしてその後、私が椅子に座ろうとすると、そこにいた人々はどこか違うところへ去っていきました。その時も、私はマスクをしていたままでした。
“どうやらマスクは何か悪い意味を持つ”と気づきました。
後に、イタリアの薬局で売られているマスクは非常に少なく、普段の生活では全くと言っていいほど使用しないことを知りました。またそれ故に、新型コロナウイルスが流行するまでは、使用目的は他人にうつすのを防ぐためであり、自己予防のための使用は滅多にないことを友人から聞きました。
ほっぺにキス
そしてもう一つ、ここでイタリアでのあいさつの仕方を紹介したいと思います。
Ciao!(こんにちは)と言ってハグをし、それから両頬にチュッチュっと軽いキスをします。
最初は照れくさいです。しかしそれは彼らにとっては、私たち日本人がハイタッチするくらいの感覚です。
私は少し恥ずかしいのでいつもCiao!と言ってハグをするだけでしたが、私の友達はほっぺを出して私がチュッとするのを待っているくらいでした。(笑)
つまり何が言いたいのかというと、マスクを滅多に使用しないこと、あいさつの際にいわゆる濃厚接触をすること、これらのイタリア人の文化が、“2月時点ですでに国内感染が始まっていた”事実に加えて爆発的な感染拡大を助けてしまった要因になったのではないかということです。
政府の対応
イタリア政府は2月29日にロンバルディア州及びヴェネト州の11の自治体を“レッドゾーン”に指定し、事実上封鎖を行いました。しかし感染拡大が抑えきれず、3月10日からは全土でのロックダウンという措置がとられました。
住民は許可なく町の出入り禁止、イベントの開催を延期・中止、公共交通機関の休止、テレワークを除く労働活動の中断、教育機関の休止、そしてあいさつのハグやキスも法令で禁止されました。
日本とは異なり、ロックダウン中に規則を破った人は罰せられることがあるため、イタリア国民にとってはとても辛いものだったに違いありません。
その後と現在
その後、ロックダウン開始から8週間経った5月4日から、ロックダウンが解除されはじめました。
友人へのインタビューによると、現在は70%~80%の人がまだ外出を自粛している状態で、また、80%ほどの人々がマスクを着用しているそうです。
3月初旬までイタリアに滞在していましたが、人々がマスクを使用している姿は見たことがなかったので、驚くべき数字だと思いました。
また、今一番したいことは?という質問に、半数以上が“友達に会いたい”と答えてくれました。このことから、ロックダウンが解除されていてもまだまだ自由な生活が戻っていないことがわかりました。
どうか、1人でも多くの命が助かりますように。
そして1日でも早く、私たちの日常が戻りますように。
読んでいただき、ありがとうございました。
*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。