こんにちは!立命館大学経営学部2回生のteamRIMIXライター・岡田奈千です。
私は、2020年2月25日から29日までマレーシアのペナン州に渡航していました。
今回はマレーシアのコロナウイルスの現状と、ペナン州で出会った現地の大学に通う友達にインタビューしたことをまとめてお話させていただきたいと思います。
マレーシアの感染状況
在マレーシア日本大使館の発表による5月22日時点のマレーシアの感染者数は以下のとおりです。
人数 | 全感染者における割合 | |
感染者数 | 7059名 | |
退院者数 | 5769名 | 82.1% |
志望者数 | 114名 | 1.61% |
現時点の入院者数 | 1149名(うち10名がICU、7名が呼吸補助が必要) |
周辺国であるシンガポールの感染者数は31,068人、インドネシアは20,769人と周辺国よりも感染者数は少ないものの、マレーシアではクラスター感染によって感染者が拡大したと言われています。
その主なクラスター発生源の一つであるのが2月27日から3月1日にクアラルンプールのモスクで行われた宗教行事です。国内外から約1万6千人もの人が参加していました。その後、日が経つにつれて感染者は急速に増加していきました。
マレーシアの政策
3月13日に政府は2つのクラスターを認め、今後この感染症は長期的な対策が必要だと発表しました。そして感染者数が553名となった3月16日には保健省より感染予防のための注意点が、首相からはマレーシア全土に活動制限令(Movemnt Control Order、MCO)を発令することが発表されました。
MCOの主な内容は、
・宗教、スポーツ、社会及び文化活動を含む大規模集会の禁止
・食料品店など日常必需品を販売する店舗以外の閉鎖
・マレーシア人の出国の禁止
・外国人渡航者の入国の禁止
・学校の閉鎖
・水、電気、通信などの指定民間企業以外の閉鎖
などです。
また、デリバリーサービスを利用することを推奨したり、日常必需品の買い出しは1家族1人と決められていました。当初は3月31日までの予定でしたが、その後も延長が続き6月9日までの延長が発表されています。
加えて、3月27日にはジョホール州の2つの地域で61件の陽性が確認され、その地域には「強化された活動制限令(Enhanced Movment Control Order、EMCO)」が発令されました。これは住民の外出の一切の禁止を意味し、食料は社会福祉団体から供給制の措置が取られました。5月16日までにその他8カ所でEMCOが適用されています。
世界的に見ても大規模なクラスター感染が起こってしまったものの、MCOの素早い発令と、初期からの長期的な視点によって、周辺国よりも感染者数が抑えられたのではないかと考えられます。
経済支援
マレーシア政府は3月27日に総額RM2,500億(6兆3,200億円)の経済対策を発表しました。国民の福祉及び生活保障にRM1,280億、中小企業を含めた企業支援にRM1,000億、経済成長強化策にRM20億を当てることとなっています。
特に企業支援は、
①雇用保険に拠出を行っている企業であること
②売上が2020年1月より50%減少している
③この支給制度の申請が受理されてから3ヶ月以内に従業員を解雇、無給休暇を取得させないこと
という上記の3つの条件を満たしている企業の従業員のなかで月給RM4,000以下の人々に3ヶ月間支援金が支給されます。
また、金額は従業員の数に応じて変わることになっており、以下の通りとなります。
月給RM4,000以下の従業員の人数 | 金額 |
-75人 | RM1,200/一ヶ月 |
76-200人 | RM800/一ヶ月 |
200-人 | RM600/一ヶ月 |
※75人以下の企業は条件②は適用されず、減少率にかかわらず受給できるシステムとなっています。
なお、申請者は雇用者で、申請が受理されてから一週間から二週間で雇用者の銀行口座に振り込まれる仕組みで、申請は4月9日から始まっており、受給も行われています。
また、インタビューによると、学生寮に住んでいる友人は食費を政府が払ってくれることになっていると言っていました。
マレーシア政府からは中間層以下への現金給付の経済支援が、加えて、西マレーシアでは電気料金が割引されるなど地域や世帯に合わせた政策をとっている部分が印象的です。
多民族国家
マレーシアは多民族国家で、イスラム教が61.3%、仏教が19.8%、キリスト教が9.2%、ヒンドゥー教が6.3%で構成されています。
私も実際クアラルンプールとペナン州を訪れ、さまざまな寺院や建造物、チャイナタウンなどに足を運びました。特にペナン島は、ヒンドゥー教寺院の前の通りを挟んでモスクがあるほどです。また、イスラム教徒は豚肉とお酒が禁止されているので、スーパーでは”Non-Halal”と書かれた場所に豚肉や酒類が売られているのを目にしました。
前述したように、マレーシアでの新型コロナウイルスが広がることになった原因の1つは宗教行事であります。よって、MCOにより大規模集会行事の開催が禁止されているなど普段のようには礼拝や信仰活動が出来ていません。イスラム教を例に取ると、モスクでの礼拝が禁止され、断食月(ラマダン)は規制がある中で行われました。キリスト教も教会での礼拝は禁止されています。精神的な影響は大きいでしょう。
政府はこのような状況の中の国民の精神状態や不安を懸念していると考えられます。
保健省が、掃除や家で出来るエクササイズなど自宅でも活動的でいられる時間の過ごし方を提示したり、自分自身や家族、友人にポジティブな言葉をかけることを推奨するなど不安を軽減させて精神的に健康でいることを呼びかけました。
MCOの規制は緩和へと向かっていますが、「3密」に当てはまる可能性が高い宗教的集会行事を今後どのように規制緩和していくのか、それぞれの宗教や民族性を考慮しつつ、国民のフラストレーションに引き続き配慮しながらの政策が必要となってくるのではないかと考えられます。
現地の学生生活
今回インタビューした友人らはペナン州にあるマレーシア科学大学に通っています。
言わずとも全世界の人々に影響を及ぼしている新型コロナウイルスですが、現地の学生が一番困っていることは、やはり学校に行けないことだそうです。
大学や私立高等学校では日本と同様、オンラインでの授業が行われているそうです。マレーシア科学大学は今学期の授業は全てオンラインでの実施が決まっています。
主にオンライン授業ではCisco WebExというオンラインミーティングツールを使用し、全授業でそのツールでの出席が求められているそうです。加えて、通常の授業よりも多くの課題が出ているそうで大変だというお話でした。
また、オンライン授業で困っている点を尋ねたところ、インターネット回線が悪く繋がりにくいことが頻繁にありスムーズに授業が受けられないことがあるそうです。
このようにマレーシアだけでなく、世界中の学生が通常とは異なる学習状況であり、学校教育の場への影響はかなり大きいでしょう。地域や家庭により平等な学習機会が保てていない可能性も否めないと思います。
今後、新型コロナウイルスが収束した後の学生一人ひとりに合わせたサポートが重要になってくるのではないかと考えられます。
友人らの通うマレーシア科学大学
まとめ
世界各国がロックダウンの政策をとっていることなどをニュースで耳にすることがありましたが、ただ一言”ロックダウン”で片付けるのではなく、それぞれの国がどのようにして国柄や国民性に合わせた政策を打っているのかを知ることが本質的理解に繋がるのだと感じました。
新型コロナウイルスで苦しむ人がこれ以上広がらず、日常生活に戻ることが出来ることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。
参照
外務省 海外安全ホームページ
日本貿易振興機構(JETRO)特集:新型コロナウイルス感染拡大の影響
在マレーシア日本国大使館