【GlobalNow-世界の現状#6】多文化主義と国民性から読み解くドイツのコロナの状況

2020/05/30

こんにちは。今回の「GlobalNow-世界の現状」では、立命館大学経営学部2回生のteamRIMIXライター・山本奏子さんと経営学部3回生の田中さくらさんに、ドイツの新型コロナウイルスの状況や人々の様子を伝えていただきます。

コメント

「立命館大学経営学部国際経営学科2回の山本奏子です。私は今年の9月から経営学部独自の留学プログラムBSAⅣでブレーメンに留学に行く予定でしたが、新型コロナウイルスの影響もあり中止になりました。ドイツに実際に足を運ぶことはできていないですが、この状況だからこそ私にできることをしようと思ってます。」

「立命館大学経営学部国際経営学科3回生の田中さくらです。私はドイツのNRW州アーヘンという町で交換留学生として7ヶ月ほど滞在しました。コロナの影響により強制帰国という形になりしたが、できるだけ現地の “リアル”を伝えれたらと思います」

感染状況

WHOによると、5月26日10:00時点で、ドイツ国内の新型コロナウイルス感染者数は179,002人、死亡者数は8,302人と報告されました。以下の表は、ドイツ周辺国の感染者と死者数をまとめたものになります。

感染者数 死者数
スペイン 235,400 26,834
フランス 142,482 28,379
イタリア 230,158 32,877
ドイツ 179,002 8,302
オランダ 45,445 5,830
スイス 30,663 1,641
ポーランド 21,631 1,007
オーストリア 16,459 641

上記の表から、EU加盟国の中でも経済大国であるドイツは、他のEU諸国に比べると死者数をかなり抑えられていることがわかります。

ドイツの政治体制

では、なぜドイツはここまで死者数を抑えることができたのでしょう?
要因の一つに、ドイツの政治体制が考えられます。

ドイツは連邦制をとっている国です。連邦制とは、2つの州が1つの主義のもとに集まり、形成される国家で、州政府と中央政府は権限が明確に分けられています。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、各州政府が独自で迅速に対応したこと連邦政府と各州政府の連携が新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることができたのが大きな要因の一つであるといえます。

2月末から3月上旬にかけて感染が拡大していったドイツは、3月15日にベルリン州を始めとし、感染者が多かったラインラント州やハンブルク州などでも、政令を次々に発表し飲食店や娯楽施設などの営業停止や、学校・幼稚園の一斉休校を命じました。

3月17日、ドイツ連邦政府は欧州委員会の提案に従い非EU市民、非EFTA市民、非英国市民のEUへの入域を30日間制限する対応をとり、ロックダウン(都市封鎖)など国境管理の強化や社会生活上のさらなる接触制限措置を各州政府と合意をかわすなど、連邦政府と各州政府の連携で感染拡大のスピードを緩やかにするための対応を迅速に行ったといえるでしょう。

普段の街の様子

普段の街の様子

国民性

ドイツは連邦制をとっており州ごとで文化が異なることや、移民を多く受け入れていることから多文化主義が浸透しています。そのため、国民性という大枠で考えることは難しいため、ドイツ国民が新型コロナウイルスに対してどのように対応したかの観点からドイツ国民の特徴を見ていきたいと思います。

本校のドイツ語教師STEGMUELLER ACHIM先生にお伺いしたところ、新型コロナウイルスに対してドイツ人がどのような行動をしたかが見えてきました。

当初、新型コロナウイルス感染症の起源が中国であり、拡大がアジア中心に広がっていたことを踏まえ、ドイツ人はコロナ騒動を遠くの出来事として見ていたといいます。
しかし、イタリアで感染者が急激に増えたことうけて身近な問題だと実感して恐怖を抱き始めたそうです。同時に、アジア差別も各地で起こったそうです。

感染が世界的にも拡大し始め、日本でもスーパーでトイレットペーパーやインスタントラーメンが売り切れたのと同じように、ドイツでもトイレットペーパーやパスタ、小麦粉の売り切れが発生しました。
また、ドイツ人は冬でも手袋やマスクなどつけるのを嫌がる人が多いのですが、コロナの状況下でマスクの義務化が各州で行われ、マスクを制作しファッションにするという変化があったそうです。

勤務形態については、日本と同じくテレワークを実施している企業が多かったそうです。

ドイツの家は日本に比べて比較的広く、大抵庭がついています。なので、休日も自宅の庭で読書など楽しむドイツ人にはSTAYHOME期間は案外快適だったそうです。

ドイツは自転車文化が強く移動手段に自転車を使う人がかなり多いです。新型コロナウイルス感染拡大を受けて電車移動をやめて、さらに自転車に乗るようになった人が増えたとおっしゃっていました。また散歩をする際でも、2メートル以上の間隔をあけるなど感染拡大防止するためのルールをしっかり守っているそうです。

このように、ステイホームは徹底し、国や州が決めたルールを必ず守るといったように、義務を果たす使命感を持つ人が多いようです。

新型コロナウイルスの感染拡大と重篤化を抑え死者数を減らすことができたのは、ドイツ人の「真面目さ」が功を奏したといえるでしょう。

今後のドイツ

ドイツは、日本の自粛要請とは異なり罰金罰則を課す州もあり、厳しく接触制限措置をとったことで、いち早く拡大を抑えることに成功しました。

今後各州ごと感染者数によって制限を厳しくするか緩和するか対応は変わってきますが、ドイツ連邦政府は制限緩和を始め一刻でも早く経済回復を測ろうとしているようにみえます。

EU加盟国で経済大国であるドイツが今後どうなるのか、連邦政府と各州政府の連携やドイツ国民の「真面目さ」が鍵を握っているのではないでしょうか。

学生へのインタビュー(田中さくらさん)

 

これは帰国する直前(2020.03.16)のスーパーの様子です。パスタやお米などの備蓄できるものはほとんど売り切れてしまうほど、町はパニックに陥っていました。しかし他国と比べると、アジア人に対するコロナ差別はあまりなく、多国籍なドイツ文化からきていると考えられます。

今回は、RWTH Aachen, FH Aachenの学生さんに30名にインタビューしました。

世界的に有名な大学であり、またドイツは学費が無料のため世界中から学生が集まります。そのため、現地学生といっても多国籍である学生の貴重な意見をいただきました!

ドイツではマスクを着けていると “感染予防”ではなく本当に害のある病気を患っていると認識されるため、マスクを着用しない文化があります。

しかし、アンケート調査によると現在では100%の方がマスクを着用していると答えました。

私が強制帰国となってしまった3月20日の時点ではマスクをしている方はいなかったので、COVID-19の影響がかなり大きいと言えます。
また、学校の再開の目処は未だに立っておらず、次セメスターの9月からと予測されています。自粛に関しては終了に近づいており、飲食店も開きはじめ、街も日常を取り戻しつつあります。なお、マスクは着用しているようです。

家での過ごし方は、勉強する、映画を見るなどが挙げられていますが、比較的孤独を感じる人は少ないです。
理由としては、ドイツではWG(Wohngemeinschaft)という4-10人ほどでの共同生活が学生の主流となっていることが考えられます。
シェアキッチンなので、自粛中でも建物内で友人に会えることが孤独を感じない理由だと考えられます。
とはいえ、複数人で外出すると警察に注意を受けるため、パーティーが大好きな現地学生にとっては苦しい日々を送っているそうです。

私も最後までドイツで一緒に生活したかったという悔しい気持ちでいっぱいです。
1日も早く、友人たちと気軽に会える日常が戻ってくることを願っています。

 

*本情報は、当局が公式に発表した情報や体験等を中心に掲載していますが、新型コロナウイルスをめぐる各国の対応・状況は流動的です。これらの国への渡航を検討される際には、各国当局のホームページを参照するほか、在京大使館に確認するなど、最新の情報を十分に確認ください。

参照

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200526-covid-19-sitrep-127.pdf?sfvrsn=7b6655ab_8