立命館とVenture Café Tokyoが毎月1回、立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開催しているイノベーション促進プログラムOIC CONNÉCTは、「イノベーションは社会とつながるキャンパスから」をコンセプトに、新しい挑戦をしたくなるような機会を提供し、イノベーション・コミュニティを創出することを目指しています。OIC CONNÉCT、そしてVenture Café が大切にするミッションは“Connecting Innovators to Make Things Happen.” OIC CONNÉCTで生まれた新たなできごと“HAPPEN”を参加者や関係者へのインタビューからご紹介します!
第5回となる今回は、臈纈染(ろうけつぞめ)の暖簾を取り扱う「京都染元しょうび苑」の3代目”アトツギ”としてグローバルな活躍を見せる上林央佑さん(立命館大学経営学部3回生)にお話を伺いました。
イベント参加をきっかけに何が生まれたのか、上林さんが感じた世界と日本の圧倒的な違い、伝統工芸品に懸ける想いを、深堀りしていきます。
上林 央佑さん
2024年8月。上林さんはOIC CONNÉCTでのとある出会いをきっかけに、シリコンバレーの舞台へ挑戦することになります。
OIC CONNÉCTにて出会ったKyoto International Entrepreneurs Community(以降 KIEC)のオーガナイザーの方に、KIECのイベントへの参加を勧められ、そのイベントで出会った方から今回のHAPPENに深く関係するDraper University(以降 DU)のインターンシップを紹介していただいたことがきっかけだと上林さんは話します。
その後インターンシップへエントリーし、面接を無事通過。上林さんはアメリカ・シリコンバレーにあるDUへ、3週間のインターンシップ「Hero Program Summer 2024」への参加が決定しました。
大きな“差”を実感した、シリコンバレーインターン
DUへの3週間インターンシップ。内容は、プログラムの運営・補佐がメインであり、37カ国から集まった100人の参加者の事業推進のサポートでした。
上林さんはこの3週間で、世界の起業家と自分との大きな差を実感することになります。
差を感じたのは、世界の起業家と自分の「行動」の範囲でした。
Hero Programのコンテンツの一つに、36時間のハッカソンイベントがあります。上林さんは4人の起業家とチームを組み、ブロックチェーンを使用した医療データの統一により、各病院でのスムーズな診断と事故時のスムーズな保険対処を促すという事業を考案したそうです。
上林さんの所属するチームは、初めの8時間でアイデアとビジネスモデルは完成、次の12時間でプロトタイプと顧客が存在するのかの検証を行いました。チーム内の1人の起業家が、顧客になりうる保険会社にすぐさまメールを送り、保険会社からのフィードバックを受け、プロトタイプや資料の修正に取り掛かっていたそうです。
成功・失敗に関わらず、結果を見てからのネクストアクションのスピードに、上林さんは衝撃を受けたと言います。
さらに上林さんが驚いたのは、そのようなスピード感は、この場所にいる人間にとってはいたってスタンダードだったということです。
「この人たちと自分では、行動の範囲が全く違う。」
この時、自分は今、シリコンバレーというイノベーションの中心地にいるんだということを改めて認識し、世界の起業家と自分との大きな差を実感したと上林さんは言います。
OIC CONNÉCTで学んだ起業家精神
現在、立命館大学経営学部3年に在籍(休学中)しながらOIC CONNÉCTのリードアンバサダーも務める上林さん。
大学のアントレプレナーシップを学ぶ授業にて、OIC CONNÉCTの告知を見たのが初めての出会いだったと上林さんは言います。
そこから興味を持って参加し、イベントにいた学生アンバサダーや運営メンバーと話してアンバサダーに誘われ、自らもアンバサダ―として関わることを決めました。
アンバサダーとしてOIC CONNÉCTと関わっていく中で、ピッチイベント「ROCKET PITCH NIGHT KANSAI 2023」が開催されることを知り、当時、起業を目指して活動していたこともありエントリー。選考を無事通過し、登壇が決定しました。
上林さんはこの時は「暖簾を世界へ」というコンセプトで、家業の暖簾を世界へ販売するためのビジネスプランで臨んだそうです。
しかし登壇後、上林さんの顔に笑顔はありませんでした。
「知識や経験の不足はもちろん、ビジネスモデルの完成度、事業に懸ける想い、ビジネスとは何かなど、あの頃の自分は恥ずかしいぐらいに何もわかっていなかった。」と上林さんは振り返ります。
ROCKET PITCHでの経験が悔しかった上林さんは、その後、必死に勉強をしながら、OIC CONNÉCTにも積極的に参加。色々な人と話をし、繋がりや知見を増やしていったそうです。
上林さんはこれまで、起業家として嬉しさ、悔しさを含め、色々な経験をされてきたそうですが、「OIC CONNÉCTが原点だ」と言います。
詳細を尋ねると、上林さんはこう答えてくれました。
「今回HAPPENとして取り上げて下さっているDUのインターンもそうですが、OIC CONNÉCTで出会った人から色々と紹介していただけるケースが非常に多いです。OIC CONNÉCTには学生から社会人、起業家、投資家、大学教授や研究者など多種多様な方が来られます。CONNÉCTで出会った方々の中には、今も定期的に壁打ちをお願いしたりなど、長くお世話になっている方もたくさんいます。OIC CONNÉCTで生まれた数々のご縁のおかげで、今の僕があります。」
Tips 「OIC CONNÉCTはこう使え!!」
OIC CONNÉCTを誰よりも活用し、現役アンバサダーでもある上林さんに、参加のコツや参加にあたって意識していることを尋ねてみました。
OIC CONNÉCTはどのように使うのが良いと思いますか?
「OIC CONNÉCTは出会いの場として最適だと思っています。しかし勘違いをして欲しくないのは、繋がりを作れるかどうかはあくまでも自分次第です。参加したからといってそれだけで繋がりが出来るわけではありません。気になる方がいれば、自分から積極的に声をかけにいく。それが重要です。」
OIC CONNÉCTに参加するうえで上林さんが大切にしていることは何でしょうか?
「とてもシンプルですが、”毎月行くこと”ですね。いつ良い出会いがあるかわかりません。運は振ってくるものと言いますが、振ってきた時にちゃんとその場にいるということが大切だと僕は思っています。僕もそれを意識しているため多くのイベントに顔を出していますが、『上林くんってどこにでもいるよね』と言われます(笑)。参加を検討している方、何回か行ったことがあるよという方は、ぜひ毎月行ってみて下さい!」
伝統工芸品を、世界へ。
―「伝統工芸品を、世界へ。」
これは、上林さんが自分の事業を紹介する時に必ず使うフレーズです。
シリコンバレーにて3週間、37カ国100人の創業者と出会い、対話を重ねたことは、日本の素晴らしさを改めて感じる機会になったと上林さんは言います。
彼らに自己紹介をする際、「日本から来た」と告げると、彼らは日本の素晴らしさを熱烈に語り始めたそうです。彼らの口から出るのは、食文化、ものづくり、アニメや漫画。そしてそこには、伝統工芸品も含まれていました。
「実は、昔はアトツギになることに後ろ向きだった。」と上林さんは語ります。
| なぜ後ろ向きだったのですか?そしてなぜ、伝統工芸品に関わることを決めたのでしょうか?
「どちらかというと、イーロンマスクやスティーブジョブズのような、”世界を変える大革命”に憧れを抱いていたんです。古臭い伝統工芸品なんて、誰がやるものか。もっと。世界を変えることのできる大きなビジネスをするんだ。そう思っていました。
しかし、海外の方と話すようになり、日本の伝統工芸品が海外で高く評価されていることを知りました。また、伝統工芸品を扱う職人さんたちとお話をさせていただき、多くの方が伝統工芸品産業の盛り上げに関して前向きではないことを知りました。今、日本では伝統工芸品は衰退傾向にあります。職人の高齢化も進んでいます。僕が今やらなかったら、日本の素晴らしい伝統工芸品がこのまま廃れていってしまうかもしれない。僕がやるしかない。そう強く思い、これまで臨んできました。」
上林さんは自身のnoteで、こう書いていました。
「自分の使命は、伝統工芸品産業を盛り上げること。」
インターン後、DUから上林さんのもとに「もう一度シリコンバレーに来ないか」とオファーがあったようで、再度シリコンバレーに行くことが決定したといいます。
上林さんの挑戦は、まだまだ続きます。
PROFILE
上林 央佑 Osuke KAMBAYASHI
2003年京都市臈纈染工房のれんやしょうび苑アトツギとして生まれる。立命館大学経営学部3回生(休学中)。大学に入学後、国際寮へ入寮し30カ国100人以上の留学生と共に1年半生活する。世界からの日本文化の評価の高さに感動し、家業である臈纈染工房で修行を開始すると同時に日本の伝統文化を3Dで世界へ発信するKoto3Dで約6ヶ月営業に携わる。Venture Café OIC CONNÉCT ambassadorとしてスタートアップの世界を知り、シリコンバレーを拠点とするアクセラレーターDraper Uにてインターンシップを経験したのち2024年10月よりProgram Assistant としてスタートアップに関わる。「伝統工芸品を世界へ」を自身のミッションとし「職人の尊厳を守り、幸福な環境で創造力を爆発させたラグジュアリー」を創造することに注力している。
OIC CONNÉCT HAPPENチーム
平田 康介(#アニマルカフェスタッフの顔もあります)
立命館大学経営学部4年生(休学中)。OIC CONNÉCT 学生チーフアンバサダー。
介護現場での勤務経験がある父との会話をきっかけに、介護施設の食事摂取量管理の課題を解決するサービス「めしパシャ」を発案。事業化に向けて取り組みながら複数のビジネスコンテストで受賞。当初は就職希望で就活を進めていたが、めしパシャの立ち上げに注力したいという思いから令和6年度の休学を決める。
OIC CONNÉCTの雰囲気を知りたい方はInstagramをご覧ください!
OIC CONNÉCT
OIC CONNÉCTは、学校法人立命館が主催し、Venture Café Tokyoが立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で毎月1回開催する、誰もが無料で参加可能なイノベーション促進プログラムです。
これまでOICが培ってきた「地域に開かれたキャンパス」の特徴をさらに進化させ、大学の枠を超えた「ヒト・コト・モノがより触発しあうキャンパス」を目指す取り組みの一貫として開催していきます。
このプログラムは毎月開催することで、起業家や研究者、学生など多様な人が交流し、学び合う機会の提供を通じ、関西を中心としたイノベーション・コミュニティを創出することを目指します。多様なイノベーター達による講演やイノベーションを加速させるワークショップ等を通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。