RSIF 立命館ソーシャルインパクトファンド|AIスタートアップKanaria Tech株式会社への新規投資を実施 学生起業家へ初投資 立命館小学校と連携した実証実験も実施

「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」は、立命館大学発のAIスタートアップ企業であるKanaria Tech株式会社(代表取締役COO:瀧下奎斗(立命館大学大学院情報理工学研究科)、所在地:東京都渋谷区)に対し、新規投資を実行いたしました。これは、2020年のRSIFの設立以来、立命館の卒業生や研究者らが率いるスタートアップを中心に投資を行ってきた中で、現役学生が創業した企業への初めての出資となります。

RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド)は、学校法人立命館が100%出資し、新たな事業を通じて社会課題の解決に挑戦するスタートアップやNPO等を支援するために設立されたインパクトファンドです。教育、環境、福祉、地域活性化といった幅広い分野に対応し、立命館大学との連携を通じて、学生や教員も参画し、理論と実践を融合させた取り組みを展開しています。また、教育プログラムの開発や研究プロジェクトの実施を推進し、そこから生まれた学生ベンチャーや研究成果を基にしたベンチャー企業への投資も実施しています。ファンドの運営は、プラスソーシャルインベストメント株式会社が担当しています。RSIFの詳細は以下をご覧ください。


Kanaria Tech社について

Kanaria Tech(カナリアテック)社は、当時・立命館大学情報理工学部の学生であった瀧下奎斗さん(現在は立命館大学大学院情報理工学研究科 博士前期課程1回生)とオルハン・イブラヒムさん(取締役CEO)らが2022年7月に創業したAIスタートアップです。

2024年11月 NVIDIA AI サミットへ参加する瀧下さん(中央)オルハンさん(右)アリシェルさん(左)

マッピングや高価なセンサーを必要とせず、RGBカメラ1台で動作可能な自律移動型ロボットのためのAIナビゲーション基盤「KRM(Kanaria Robotic Model)」を開発し、複雑かつ人の往来が激しい環境でも、ロボットが安全かつ柔軟に自律移動できる“社会的ナビゲーション”の実現を目指しています。このシステムは、ロボットに高度な環境理解能力と人間との自然な対話インターフェースを与える点が大きな特徴です。ロボットが障害物に直面した際に、状況に応じて支援内容を説明し、近くの人に助けを求めることも可能です。

また、KRMは、ナビゲーションの意思決定プロセスを可視化し、安全性への懸念を軽減するとともに、人とロボットのスムーズな適応を実現する「説明可能なAI(XAI)」の概念も取り入れています。注目すべきポイントは、KRMが持つ自己学習の仕組みです。これまでのロボットは、あらかじめ決められた動作やルールに従うだけで、想定外の状況や複雑な環境の変化に柔軟に対応することができませんでした。また、現場で収集される貴重な走行データも、その後の成長に活用されることなく、眠ったままの状態でした。しかしKRMは、実際の運用現場で得られるデータをロボット自身が学習し、周囲の環境に適応しながら日々進化を続けることができます。一度開発・導入された後も、経験を重ねることで動作を最適化し続け、導入初期の性能にとどまらず、時間の経過とともにより賢く、より柔軟になっていきます。従来のナビゲーションアルゴリズムでは実現が難しかった「継続的な学習と進化」を可能にする点こそが、KRMの最大の強みです。これにより、実際の職場環境で活用できる、データ駆動型のAIナビゲーションシステムを構築できます。

競合各社がハードウェアやセンサー技術に注力する中で、Kanaria TechはAIによる認識・判断能力と人間との協調というソフトウェア面での差別化を図っています。

2025年2月 Venture Café GLOBAL GATHERING TOKYO 2025でのグローバルピッチイベント「Pitch2Tokyo」でピッチする瀧下さん

瀧下さんは大学在学中には、アメリカ・ヒューストンにあるNASAの研究所を訪問し、複数のコンテストに参加していずれも入賞を果たしました。オルハンさんも高校時代にマサチューセッツ工科大学(MIT)から複数の賞を受賞し学術論文を発表しています。アリシェルさん(CTO)は、プログラミングオリンピック優勝や経済産業省からのAI分野表彰経験を持ち、以前はアジア最大のAIコミュニティ「Machine Learning Tokyo」の会長を務めていた経験を持つなど、彼らは学生時代から高い研究・開発実績を積んでいます。

現在は自社開発の移動ロボット試作機で概念実証(PoC)を進めており、今後はこのソリューションをロボットの製造・運用を行う企業に対して提供し、技術パートナーとして協業しながら社会実装を進めていきます。KRMは他社製ロボットへの組み込みを前提とした汎用ナビゲーションシステムであり、導入企業のロボットに搭載することで、空港や商業施設といった実環境における荷物・物品搬送など、幅広いシーンでの活用が可能です。従来のナビゲーションシステムでは、ロボットの機種や用途ごとに個別のモデル開発が必要とされ、導入のたびに大きなコストと調整が発生していました。KRMはこの課題を解決し、どの企業の、どのようなロボットにも柔軟に統合できる設計となっています。この高い拡張性と導入のしやすさは、当社技術の大きな強みのひとつです。Kanaria Techは有望なスタートアップを支援するNVIDIA Inception Programをはじめ、Microsoft for Startups、Google for Startups、Amazon Web Servicesに選出されています。

立命館小学校と連携した実証実験も実施

今回の投資を通じた連携の一環として、Kanaria Techは立命館小学校の3・4年生へのロボット授業および、5・6年生の参加するロボット部への特別講座を実施しました。

この講座は、Kanaria Techが開発するAI搭載配送ロボット技術のさらなる高度化を目指し、子どもたちの動きや反応などをデータとして収集し、ロボットの学習に活用する実証実験に向けた第一歩となりました。小学生たちは瀧下さんの開発したロボットに興味津々。

瀧下さんは「今回初めて立命館小学校の皆さんとロボットの講座と実証実験を行いましたが、本当に興味津々で『こうしたらいいと思う!』『これどうなってるの?』とたくさん質問やアイデアも出てとても貴重な機会になりました。実証実験としても、子どもたちが元気に走る、ジャンプする、覗き込むなど、予想以上に素晴らしいデータを収集させていただき、実際にKRMのAI技術向上に繋げていきたいと思います」と話します。

Kanaria Tech 瀧下さん(右)とプラスソーシャルインベストメント株式会社 代表取締役の野池雅人氏

今回のKanaria Techへの投資は、RSIF設立以来初の「現役学生によるスタートアップへの投資」となりました。
RSIFを運営するプラスソーシャルインベストメント株式会社 代表取締役の野池雅人氏は、投資の決め手として、「学生ながらも技術的な優位性を持っていることはもちろんですが、今回のように教育の場面で一緒に関わってもらい、立命館学園と連携して、AIやロボットの可能性を子供たちにも伝えていけるような可能性も感じました。立命館の持つ様々なリソースを活用することで、Kanaria Techの技術そのものがさらに向上するという相乗効果も期待できます。この連携を皮切りに、同社の技術を活かした労働力不足の解消や福祉分野への応用など、幅広い社会的インパクトに繋がる可能性に期待しています」とコメントしています。

RSIFは教育機関のファンドであり、大学や附属校と投資先スタートアップとの連携が大きな特徴です。小学校での特別講座という形で実現した今回の取り組みは、小中高大の連携、学園のリソース提供、そして教育活動そのものに連携が繋がる、立命館だからこその連携事例と言えます。

RSIFとKanaria Techは、今回の投資と連携を通じて、Kanaria Techが掲げる「AI × ロボット」でより良い社会を構築するというビジョンの実現を後押しするとともに、立命館学園におけるアントレプレナーシップ教育や研究活動との融合をさらに深め、社会課題解決に貢献する人材育成とイノベーション創出を目指してまいります。

■ ファンド概要(https://r-rimix.com/fund/
名称:立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合
運営会社名:プラスソーシャルインベストメント株式会社
所在地:京都市上京区河原町通丸太町上る出水町284番地
代表者:代表取締役社長 野池雅人
設立:2016年4月

■ 投資先概要
会社名:Kanaria Tech株式会社(https://www.kanaria.tech/

代表取締役COO:瀧下 奎斗
設立:2022年07月08日
所在地:東京渋谷区道玄坂 1丁目10番8号 渋谷道玄坂東急ビル2F-C
事業内容:ロボットの自律移動・作業の実現を目指すAIシステム「KRM」の開発

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