RSIF 立命館ソーシャルインパクトファンド|「哲学クラウド」を展開する株式会社ShiruBeへの新規投資を実施しました

「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」は2024年10月、人文知の社会実装にビジネスからチャレンジする「哲学クラウド」を展開する株式会社ShiruBe(本社:東京都品川区、代表取締役:上館誠也(立命館大学卒業))に新規投資を実施いたしました。

RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド)の詳細は以下をご覧ください。

また本件について、2024年10月17日付けの日本経済新聞に掲載されました。記事詳細は下記よりご覧下さい。

プレスリリース概略

以下、本件プレスリリースの概略です。

人文知の社会実装にビジネスからチャレンジする哲学クラウド、立命館ソーシャルインパクトファンドより資金調達を実施

株式会社ShiruBe(本社:東京都品川区、代表取締役:上館誠也)は、立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合(運営:プラスソーシャルインベストメント株式会社、京都府京都市、代表取締役社長:野池雅人)を引受先とした約3000万円の第三者割当増資および社債発行を通じてプレシリーズAラウンドでの資金調達を実施いたしました。この資金調達により、哲学者の体制強化および市場拡大に向けてさらに積極的に取り組んでまいります。

さらに、新雇用体制の第一号として、創業期から共に歩んできた東京大学 共生のための国際哲学研究センター 特任研究員の堀越耀介氏をお迎えする予定です。この雇用体制がどのように研究者と企業の双方にメリットをもたらすか、堀越氏と弊社代表の上館が語る対談を別途noteにて公開しております。未来の働き方の可能性にご関心のある方は、ぜひご覧ください。

対談note:https://note.com/tetsugaku_cloud/n/nd9ef95dc0508?sub_rt=share_pb

左より、ShiruBe 代表取締役 上館誠也、ShiruBe Biz Manager 湯浅朱菜、学校法人立命館 財務部部長 酒井克也氏、プラスソーシャルインベストメント株式会社 代表取締役社長 野池雅人氏

資事業開発の背景および市場概況

日本の産業と社会を支える高度な学術研究。しかし、その最前線に立つポストドクター(以下、ポスドク)は、厳しい現実に直面しています。

文部科学省の最新調査によれば、ポスドクの45.7%が月額35万円未満の給与で働いており、その中には20万円未満という低い賃金で従事する研究者が15.2%も存在しています(※1)。これらの給与水準は日本の平均年収である458万円(※2)を大きく下回り、未来の日本を支える研究者たちが安定した生活を維持しながら研究に専念することが難しい状況です。

さらに、ポスドクの約60.5%は大学や公的研究機関での任期が1年以下となっており(※1)、たとえ職を得ても研究に専念することが難しく、大学業務と研究活動をこなしながら同時に次の職を探さなければならないという不安定な環境に置かれています(図1参照)。

特に人文系のポスドクは、理系と比べて雇用の機会がさらに少なく(※3)、社会的貢献が十分に評価されていない現状があります。弊社は、技術の発展やグローバル化が進むなか、多様な文化的・倫理的視点を持つ人文学の知見が、企業が直面する複雑な課題を解決するうえで欠かせない要素であると考えています。そのため哲学コンサルティングの提供を通して人文系の知見を活用し企業の課題解決を支援してまいりました。

※1 ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(文部科学省)
https://www.nistep.go.jp/archives/57037
※2 令和4年分 民間給与実態統計調査(国税庁)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2022.htm
※3 人社系博士のキャリアパス ~ 人社系大学院の現状と課題(中央教育審議会大学分科会大学院部会 佐久間淳一 名古屋大学人文学研究科)
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2018/06/20/1406107_03.pdf

資金調達の背景と目的

弊社は2022年10月のサービス提供開始以来、大手グローバルメーカーを中心にサービスを提供しながら、人文系研究者が活躍できる場を積極的に創出してまいりました。

このたび、新たな雇用形態の構築による哲学者の体制強化や、関西エリアでの人文系研究者の採用および事業拡大を推進する目的で、プレシリーズAラウンドでの資金調達を実施する運びとなりました。

今回の増資による主な資金使途は下記の通りです。

①新しい雇用体系の構築による哲学者の体制強化:新しいエコシステムを通して弊社が人文系研究者のキャリアの緩衝地帯となり、研究者としてのキャリアを目指しながらその高度な知識や研究成果を社会で活かせる環境を提供します(図3参照)。

具体的には「準社員」制度を構築し、月平均所定労働時間の半分を弊社でのコンサルティング業務に従事して安定した生活を確保しながら、残りの半分で研究活動に専念できるよう応援いたします。この制度を通して、研究者の知見を活かした幅広いキャリアの実現を応援いたします。

②関西エリアでの人文系研究者の採用強化:京都や大阪に拠点のある立命館大学をはじめとする関西圏の大学と連携し、人文系研究者の採用を強化いたします。

③関西エリアでの事業拡大の推進:京都や大阪を拠点とする立命館大学と連携し、関西エリアの企業に向けたサービス拡販を推進してまいります。

今後の展望

これまで培ってきたビジネス課題への人文系ナレッジ活用のノウハウとデータベースをさらに強化し、ビジネスとアカデミアがシームレスに交わり、新たな可能性が解放される社会の実現を目指してまいります。

プラスソーシャルインベストメント株式会社 代表取締役 野池雅人氏 コメント

本ファンドは学校法人立命館の学園ビジョン2030「挑戦をもっと自由に」の具現化の一つとして、新たな事業を通じた社会課題解決の挑戦を支援することを目的に、2020年度に設立されました。

本学の卒業生である上館さんが代表の株式会社ShiruBeは、ご自身のもつ組織開発の経験と哲学の知見を活かし、考える組織づくりを目的とした企業の組織改善・開発、従業員のエンゲージメント向上を図るサービスを展開されています。

これらはまさに本ファンドの設置趣旨に合致したものであり、今回このような形で資金提供・事業連携ができますことを大変光栄なことと思っています。また株式会社ShiruBeの実践が、人文・社会科学領域の学びやキャリア形成にイノベーションを起こすことも大いに期待をしているところです。

今後も学園が持つ資源を最大限に活用しながら、ShiruBeが掲げるミッション・社会的インパクトの達成に向け、共に力を尽くしたいと考えております。

インハウス・フィロソファー(社内哲学者)の紹介とコメント
梶谷 真司氏(東京大学 教授)

コメント

哲学なんて社会にとって何の役にも立たないと思っているにちがいない。しかし哲学が企業活動に関わるのは、双方にとって途方もないメリットがある。研究者にとっては、少子化が進む今日、大学のポストは減る一方で、就職する可能性はどんどん低くなっているし、仕事も雑務が多く、のんびり研究できる環境ではない。だが、哲学者を求めてくれるような企業で働ければ、生活を安定させたうえで、楽しく研究が続けられる。

上館誠也さんが哲学をコンテンツに立ち上げたコンサルティング会社ShiruBeで準社員として働く堀越耀介さんは、最高のロールモデルである。彼は私が運営する東京大学の共生のための国際哲学研究センター(UTCP)の研究員として自らの研究を続けながら、これまでの哲学プラクティスの知見と経験を活かして仕事もしている。そして仕事での経験が刺激となって、研究のほうも豊かなものになっている。哲学と企業という、一見もっとも離れているように思われる二つが出会うところには、けっして表面的ではない、真に有意義なWin-Winの関係が可能なのである。

経歴/プロフィール

1966年、名古屋市生まれ。89年、京都大学文学部哲学科卒業。94年、京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。97年、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(人間・環境学)。

2015年から現在まで、東京大学大学院総合文化研究科教授および共生のための国際哲学研究センター(UTCP)のセンター長。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)のプログラム設計者としても活躍。実践的な哲学として「哲学対話」を日本で広めた第一人者でもあり、企業や学校教育の場で実践する。

著書に『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』(幻冬舎新書)『問うとはどういうことか~人間的に生きるための思考のレッスン』(大和書房)などがある。

■ ファンド概要(https://r-rimix.com/fund/
名称:立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合
運営会社名:プラスソーシャルインベストメント株式会社
所在地:京都市上京区河原町通丸太町上る出水町284番地
代表者:代表取締役社長 野池雅人
設立:2016年4月

■ 投資先概要
会社名:株式会社ShiruBe(シルベ)(https://www.service.tetsugaku-cloud.jp/
代表の上館が哲学を学ぶ中で、「こうあるべき」という「正しさ」が原因で自分自身が生きづらさを感じていると気づき救われた経験から、多くの人が自分らしく生きるきっかけを社会に届けたいと考え、設立にいたる。

代表者:代表取締役 上館 誠也
所在地:東京都品川区西五反田8-4-13 五反田JPビルディング2F co-lab 五反田 with JPRE S01
設立日:2022年4月15日
事業内容:哲学コンサルティング、組織コンサルティング

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