RSIF社会起業家インタビュー#2:株式会社komham・西山すのさん「バイオテックを通じて本質的な課題解決を」

こんにちは、RIMIX事務局です。

RIMIXでは、学校法人立命館の学園ビジョン2030「挑戦をもっと自由に」の具現化の一つとして、新たな事業を通じた社会課題解決の挑戦を支援することを目的に、2020年度に「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」を設立しました。
立命館学園の学生・卒業生(校友)や教職員の起業や事業を支援し、社会起業家のエコシステム・プラットフォームを目指します。

「RSIF社会起業家インタビュー」では、RSIFの投資先である企業で活躍する社会起業家にインタビューを行います。
第2回となる今回は、「株式会社komham」(コムハム) の代表取締役で、立命館アジア太平洋大学卒業生の西山すのさんに、ご自身の起業の経験や同社の事業展開についてお話を伺いました。


独自開発した微生物群を使って、生ごみをはじめとする廃棄物の処理システムを提供しているkomham(コムハム)。
株式会社komhamを立ち上げた、代表取締役の西山すのさん(立命館アジア太平洋大学卒)は、自身の経験を生かしバイオ領域から社会インパクトを生み出し、本質的な課題解決に取り組まれています。

微生物群「コムハム」は、西山さんのお父さんが偶然発見した微生物群で、西山さんは父からその技術を引き継ぎました。コムハムは、1日で投入した生ごみの98%以上を水と二酸化炭素に分解することができます。
西山さんはこのコムハムを通じて、「自然と”社会”や”環境”に目が向くような世の中にしたい」と語ります。

起業のきっかけ いくつものキャリアチェンジを経て

学生のうちにやりたいことを見つけられなかったと言う西山さん。親の就職して欲しいという願いを叶えるために最初は大手企業に就職、一定の評価はもらっていたものの、1年で退社。その後、PR会社、ゲーム会社の広報職、クリエイティブ会社で働き、消費を促進するような案件ばかりをこなすうちに、「自分たちの自己満足で終わっている、このままでいいのか」とい思いにかられていったといいます。

いくつものキャリアチェンジの経験を通じて、2−3年で成果を出せて満足してしまうことに物足りなさを感じ、社会に対して価値を創造していくには自分の手で事業を興すしかないと思い、起業を決意されました。

「社会的インパクトがあり、自分が時間をかけてでも成し遂げたいと思えるような、すぐに解決できないような壮大なテーマにしようと思いました」

発信が苦手な領域に取り組むことで、自身の広告PR出身という強みを生かした広がりを作ることができるのではないかという思いから、バイオ領域への参入を決意したと言います。

父から引き継いだ微生物群「コムハム」

バイオ領域での起業を決意された際に、お父さんの姿がよぎりました。「父が当時行っていた微生物を使った廃棄物処理技術事業を、もしも父がいなくなったとしても終わってしまわない事業にしたい」と思い立ち、すぐに父に電話をかけ、「継ぎたい」と伝えました。

コムハムとは、アイヌ語で”枯葉・枯草”という意味を持ち、父が、枯れた牧草を使用して菌を作っていたことが由来です。牧草が処理性能を担保するメインの微生物だと思っていたが、調べてみたら全然違っていたようです。ですが、それも面白いと思いそのまま会社の名前にされたそうです。

廃棄物の処理だけでなく、そこで生まれる繋がりを大切に

コムハムの廃棄物の処理システムでは、木材チップにコムハムを住ませて、そこに生ごみを投入していきます。

コムハムの最大の特徴は、分解スピードが速いことです。コムハムは投入した生ごみを1日で98%まで分解することが可能となっており、水と二酸化炭素に分解されます。ユーザーさんたちは、まるでマジックのようだと、とても驚かれるようです。コムハムを使った廃棄物処理は、一般的な堆肥化処理とは異なり、畑利用の見込みがある分だけを堆肥とし、堆肥の利用ニーズがなければ、堆肥化さずに運用させることができる特徴があります。

「コムハムのシステムでは、生ごみを環境に優しく処理する仕組みを機能させることを目的としているため、わざわざ全てを堆肥にする必要はありませんし、堆肥にしなかったとしても水と二酸化炭素に分解されるため、処理物のかさが増していくことはありません」と言います。

さらに、この処理場は、コミュニティコンポストとして地域の交流を生み出すきっかけにもなっています。地域のおじいちゃんと小学生が仲良くなったり、コムハムをまるでペットのように可愛がってくださる方もいらっしゃたりします。

そして、9月中旬からは渋谷区と連携し、街中にコンポストを設置、一人暮らしでほとんどで生ごみが出ない家庭生ごみも近場でコンポストすることが可能になる実証実験を展開されています。

理想とこれから、本質的なアプローチを目指して

コムハムが取り組む社会課題は、ゴミ問題とそれにまつわる気候変動です。

「SDGsや環境問題を意識した事業が新しく出てきているが、人間が考える利便性が優先されすぎている事業が多いという印象がありました。コンポストは昔からあった廃棄物処理手法ではありますが、機器や技術が発展してきている今だからこそ体系化できると思いました」

人間が求める最低限の利便性もあり、地球や自然への負荷も配慮した仕組みを次世代に残せるのか、を問い続けることが今の時代に必要だと感じました。

元々広告・PR領域で活躍していた経験を生かし、コムハムの事業を通じて得た環境コンシャスの人が多い地域などの情報を収集し、データベースを作ることを構想されているそうです。また、PRは人に消費させるためものなのでインフルエンサーを利用しますが、今後マーケティングの際にコムハムのデータベースを提供できればと考えておられました。

一緒にやっていくパートナー企業さんについて「派手にやりたいわけではないので、投資家・出資先、という関係性ではなく、まずはお互いにビジョンを共有し、お互いに良いと思っていることを大事にしたい」と西山さんは言います。

今後について、まずは一つは、渋谷区での実証実験の結果をもとに技術提供フローをアップデートし導入社数を増やしていくことを掲げています。

学生に向けてメッセージ

最後に西山さんから、立命館の学生に向けてメッセージをいただきました。

「とりあえず、やってみたいことはやってみるのがいいと考えています。成熟した(発展した社会になった)今だからこそ、社会課題を考えた事業を創造できる社会になってきたと思います。それと同時に、どんな事業に取り組む人でも社会課題を無視した非持続可能なビジネスはできない環境になりつつあります。そんな取り巻く環境があるからこそ、自分が取り組んでいることは、ソーシャルグッドな取り組みにとどめるのか、ビジネスとしてワークさせる事業にするのか、自身のスタンスが大事になると感じます。いろんな起業家が増えて欲しいと思っています。ぜひ興味を前に進めてみてください」


PROFILE

西山 すの さん

立命館アジア太平洋大学卒業。PR会社を経て、2016年、クリエイティブファーム株式会社パーティーに参加。2018年よりフリーランスとして独立後、PARTY社案件に加え、VALUやワンメディアなどスタートアップのPR/ブランディングを担う。2020年より現職。

株式会社komham https://komham.jp/

「あらゆる人が 持続可能な選択をしたくなる未来をつくる 」をミッションに掲げ、有機性廃棄物を高速分解/減容する能力を持つ微生物群「コムハム」の研究と、その研究技術を用いたバイオマスリサイクルシステムを、食品ロスや家畜糞尿の処理に困っている事業者へ提供しています。また、有機性廃棄物の処理技術提供にとどまらず、弊社技術を応用したサービスや商品の開発を行い、だれもが意識せずとも環境にやさしい暮らしができるインフラ作りを目指しています。

INTERVIEW

隅田雪乃(立命館大学生命科学部4回生)

幼少期からアウトドアに出かけることが多かったことから自然が大好き。カンボジアの渡航や飲食店アルバイトの経験から環境問題・食品ロス問題に関心をもち、現在、Uni-Com(ユニコーン)というチームで、大学の食堂で発生した生ごみを地域で資源循環させるモデル作りを行っている。京都市内のシェアハウス在住。

一瀬優菜(立命館大学経営学部4回生)

大学入学後、新興国への教育ボランティア活動を行う。2回生時に、ビジネスによって社会課題を持続的に解決する《ソーシャルビジネス》に出会い、Bean to Barのカカオショップでアルバイト。現在は社会的投資や大学発のソーシャルインパクトファンドに関わるインターンを行う。卒業後はIT企業へ就職予定。趣味は登山。

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