RSIF社会起業家インタビュー#4:たんたんエナジー株式会社・木原浩貴さん「エネルギーの地産地消の実現へ」

こんにちは、RIMIX事務局です。

RIMIXでは、学校法人立命館の学園ビジョン2030「挑戦をもっと自由に」の具現化の一つとして、新たな事業を通じた社会課題解決の挑戦を支援することを目的に、2020年度に「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」を設立しました。
立命館学園の学生・卒業生(校友)や教職員の起業や事業を支援し、社会起業家のエコシステム・プラットフォームを目指します。

「RSIF社会起業家インタビュー」では、RSIFの投資先である企業で活躍する社会起業家にインタビューを行います。
第4回となる今回は、電力の地産地消などエネルギー事業を通じて持続可能な地域づくりを目指す「たんたんエナジー株式会社」の代表取締役で、立命館大学卒業生の木原浩貴さんに、ご自身の起業の経験や同社の事業展開についてお話を伺いました。


再生可能エネルギーを家庭、企業、公共施設に届けることで、丹波・丹後地域との繋がりを作り、気候変動対策をしながら地域を元気にするたんたんエナジー。代表取締役の木原さん(立命館大学卒)は、学生時代のフィールドワークなどの学び、その後の京都府温暖化防止センターでの経験、そして自身の「挑戦したい」という気持ちをきっかけに事業を興されました。

木原さんは「地域の方々が再生可能エネルギーに対してポジティブ受け止められる、そして日常の中に当たり前に温暖化対策がある社会を創りたい」と語ります。

起業のきっかけ

学生時代の「学び」と「活動の経験」の二面が重なり、それが起業に繋がったと話す木原さん。

学びの面では、「なぜ人は気候変動問題を理解しているのに心で受け入れられないのか」ということを研究し、それを活かして、環境教育等のプロジェクトを担ってこられました。また、活動の面では、京都府温暖化防止センターにおいて様々な団体と連携して省エネラベルの社会実験を行い、正式に条例で添付が定められました。それまでのラベルは省エネに対して○か×であったものを多段階のものに変えることで、基準をクリアすれば○になるのではなくより効率の良いものを作ることに貢献されました。省エネ性能の電化製品の使用で消費者にとっては電気代の節約に繋がり、小売業者にとっては付加価値の高い製品が売れるという点で『三方良し』ができたと語ります。このとき気候変動対策と地域でお金をまわすことは同じベクトルで話せることを実感したといいます。

地産地消の中に気候変動対策はあり得るということを経験し、エネルギーの地産地消への取り組みとして「たんたんエナジー」を起業されました。

たんたんエナジーが目指す世界

たんたんエナジーは福知山市を含めた5者と協定を結び連携し、豊かで自立した持続可能な地域社会の実現を図るべく、協定に基づいて小・中学校を含む公共施設40カ所に再生可能エネルギーの電気を販売しています。福知山市全域から1年間に流出するエネルギー費用は年間約100億円に上るそうで、仮にエネルギーの地産地消が実現すれば毎年100億円が地域に投資できることになります。福知山市は古くから水害に悩まされており、気候変動問題は市民の命や財産に直結するため、福知山市長も気候変動対策への強い想いを持っておられるそうです。こうした思いと、たんたんエナジーが実現したい未来が合致し、協定を結び福知山市を拠点にしているといいます。実際に、福知山城ではたんたんエナジーの再生可能エネルギーが使用されており各メディアに取り上げられたそうです。

個人向けの電気の販売では、丹後・丹波を感じてもらうべく丹後・丹波の生産品をプレゼントするキャンペーンを行いました。単に電気を売るのではなく、たんたんエナジーをきっかけとして丹後・丹波との繋がりを感じてもらい地域に貢献していくことを目指しているといいます。

新しい取り組みとして取り組んだのがオンサイトPPAと呼ばれる仕組みです。これは、需要家の屋根などを借りて発電システムを設置し、電気を直接供給する、文字通りの地産地消の仕組みです。今回のプロジェクトでは、福知山市の所有する体育館や武道館、学校給食センターの屋根を借りて太陽光パネルと蓄電池を設置し、武道館には、通常時は電気自動車の充電に使用でき、停電時には電気自動車から建物に送電できるシステムを整備する予定です(1月末完成予定)。そしてこの初期投資に関わる費用の一部は市民出資で賄う予定です。ヨーロッパの風力発電が市民出資で設置された例を参考にし、地域の方々の資金を地域の再生可能エネルギーに使い、得られた利益から剰余金を分配することで、地域のお金を地域で循環させることができます。そして、この市民出資の形に踏み切ったきっかけは学生時代の先生からの「地元の人に還元してこそ再生可能エネルギーの形である」という言葉だったと木原さんは語ります。

たんたんエナジーが目指す世界

エネルギーの地産地消をはじめ、再生可能エネルギーを地域の人たちにポジティブに受け止められる好循環を作り、温暖化対策や脱炭素を日常としていくことが未来に繋がると木原さんは話します。再生可能エネルギーで自然の恵みの範囲で社会を創り出すことが社会のベースであり、自然や資源の地産地消を共通認識として可視化することで地域の人たちが気候変動対策に携わっていることを実感してもらうことがたんたんエナジーに必要とされていることだといいます。

学生へのメッセージ「分かる、行動を変える、関わる」は三角形

木原さんからいただいた学生へのメッセージは「やりたいことをやりましょう」でした。「大学では幅広い知識が得られるけどほんの入り口だけ。自分の興味のあることに対しては先生を頼ってみたり、街に出て人の話を聞いてみたり、いろんな挑戦をしてください。『分かる』→『行動が変わる』→『関わる』の3ステップではなく、3つの中で入り口はどこでもいい。3つは矢印がお互いに向く三角形の構図だと思います。自分の気持ちに素直に、どこからでも行動してみてください」


PROFILE

木原浩貴さん

2000年に立命館大学産業社会学部を卒業し、今は非常勤講師として「現代環境論J」を担当中。趣味はキャンプと京都サンガF.C.の応援。2児の父として日々奮闘する毎日。

たんたんエナジー株式会社 https://tantan-energy.jp/

たんたんエナジーは、電力の地産地消を通じて持続可能な地域づくりに貢献することを目指し、この問題に取り組む研究者や団体が連携して立ち上げた会社です。2021年1月からは、「立命館ソーシャルインパクトファンド投資事業有限責任組合」も株主として参画しています。現在、福知山市の小中学校や庁舎、福知山城等に、再生可能エネルギー由来のCO2ゼロ電力を供給しています(※FIT電力に非化石証書(再エネ指定あり)を組み合わせて実質的な再エネ電力として供給)。今後も、気候変動を防止し、地域に好循環を生み出すべく、取り組みを進めて参ります。

INTERVIEW

岡田奈千(立命館大学 経営学部国際経営学科 3年)

大学入学後からカンボジアへの教育ボランティア団体に所属し、現在は団体の副代表を務めている。2年次にはファンドレイジングに関心を持ちはじめ、国連機関ファンドレイザーとしてのアルバイトを開始した他に、NPO法人にてファンドレイジング担当のスタッフとして所属している。大学では人的資源管理のゼミに所属し男性の育児休業について学んでいる。

一瀬優菜(立命館大学経営学部4回生)

大学入学後、新興国への教育ボランティア活動を行う。2回生時に、ビジネスによって社会課題を持続的に解決する《ソーシャルビジネス》に出会い、Bean to Barのカカオショップでアルバイト。現在は社会的投資や大学発のソーシャルインパクトファンドに関わるインターンを行う。卒業後はIT企業へ就職予定。趣味は登山。

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