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RSIF社会起業家インタビュー#1:ナオライ株式会社・三宅紘一郎さん「多様で豊かな日本酒文化を次世代に」

RSIF社会起業家インタビュー#1:ナオライ株式会社・三宅紘一郎さん「多様で豊かな日本酒文化を次世代に」

こんにちは、RIMIX事務局です。

RIMIXでは、学校法人立命館の学園ビジョン2030「挑戦をもっと自由に」の具現化の一つとして、新たな事業を通じた社会課題解決の挑戦を支援することを目的に、2020年度に「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」を設立しました。
立命館学園の学生・卒業生(校友)や教職員の起業や事業を支援し、社会起業家のエコシステム・プラットフォームを目指します。

「RSIF社会起業家インタビュー」では、RSIFの投資先である企業で活躍する社会起業家にインタビューを行います。
第1弾となる今回は、「ナオライ株式会社」の代表取締役で、立命館大学経済学部卒業生の三宅紘一郎さんに、ご自身の起業の経験や同社の事業展開についてお話を伺いました。

なお、7月9日、ナオライの三宅紘一郎さんをゲストにお呼びした「RIMIXオープンゼミ」をオンライン・対面(BKC開催)のハイブリットで開催しますので、ぜひご参加下さい

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広島県呉市、久比・三角島―。

「日本酒酒蔵の多様性を未来に引き継ぐ」ことを実現するため、日本酒を核としたさまさまな事業を展開するナオライ。創業者で代表取締役の三宅紘一郎さん(立命館大学経済学部卒)は、出身地である広島県で、瀬戸内海に浮かぶ三角島(みかどじま)を拠点に、社会課題解決を目指して事業を興しました。

ナオライでは、三角島で自ら栽培したオーガニックレモンからつくるスパークリング酒「MIKADO LEMON」、日本酒を原料とし低温浄溜という独自の製法で日本酒やウイスキーと並び得る新ジャンルのお酒「浄酎」(じょうちゅう)などのお酒の製造を行っています。これらのお酒を通じて目指しているのは「人の営みが自然や生物と調和する世界」の実現です。

起業のきっかけは「日本酒の衰退」

三宅さんの起業のきっかけは、まわりに酒造関係の仕事をしている人が多く、小さい頃から日本酒業界を身近に感じていたことだそうです。三宅さんによれば、日本にはいま1500ほどの酒蔵がありますが、この40年で約1/3にまで減少しており、業界は衰退しているといいます。

日本酒業界の衰退を目の当たりにし、危機感を抱く中で、大学在学時に上海交通大学に留学。卒業後も中国・上海に渡り、日本酒の販売やマーケティングに携わりました。当時から「日本酒」は「SAKE」として海外でも人気になり始めていましたが、市場としてはまだまだ大きいとは言えない状況でした。さらに、日本酒は他のお酒に比べて水分が多いため劣化が早く、ウイスキーやワインのように「◯年モノ」などとしてヴィンテージにはならないという、「消費期限問題」という大きな壁があります。

中国の地で三宅さんは、そんな日本酒の現状に対して「自分が日本酒業界を変えたい」と思い立ち、究極の日本酒ブランドを作りたいという思いを抱き、日本に帰国。帰国後の2014年にはSUSANOOという日本初の社会起業家アクセラレータープログラムに参加し、起業の術を学びました。SUSANOOは、シリアルアントレプレナーの孫泰蔵氏とNPO法人ETIC.が立ち上げた、社会課題領域に特化した起業家育成プロジェクトです。三宅さんはそこで孫泰蔵氏と出会い「スタートアップの使命は世界を変えること」「小さくても業界課題が音を立てて変わるような、その人にしかできないことしろ」という教えを受け、プログラム修了後に地元広島に戻り、広島のレモンを生かしたお酒を造ることとなり、そこでナオライを創業したといいます。

日本酒を通して「人の営みが自然や生物と調和する世界」へ

ナオライは2017年、「MIKADO LEMON」というスパークリング酒をリリースしました。瀬戸内海の久比・三角島で栽培した皮まで食べられるレモンからつくるお酒は、有機栽培を行う農家さんとの出会いや島の人々との交流を経て、着想から3年かけて作り上げた日本酒由来のスパークリング酒です。それら人々との出会いを通して三宅さんは「人と自然が調和する酒造り」を意識するようになり、ひいては地域全体でも人と自然が調和する状況を作りたいと考えるようになったといいます。

ナオライでは現在、久比・三角島を中心に、自らが運営する3ヶ所のレモン畑での有機レモン栽培を行っているほか、地域の農家さんと連携したレモンの有機栽培を行い、「ミカドレモン」としてブランド化を目指しています。いま広島県内などで作られているレモンの殆どは農薬を作ったものですが、年に何度も農薬を散布することで土壌や生態系が破壊され、農家さん、つまり人にも健康被害が起こる可能性もあります。

農薬を使ったレモンはもちろん虫が食べたりせずピカピカで、市場価格は高いですが、三宅さんらはお酒にレモンを使うため、見た目は関係ありません。そこで、お酒に加工することで付加価値をつけて、高く買い取ることで農家さんも儲かるという仕組みを作っています。ただ生業としての農業ではなく、自然と共生し、命を育て畑に行くことが楽しいという農業のあり方を地域でできるようになっていきたいと考えているといいます。

日本酒の概念を変えるお酒「浄酎」

2020年、ナオライは新たな二作目のお酒として、日本酒を低温浄溜という独自の製法でつくる「浄酎」(じょうちゅう)をリリースしました。日本酒を原料とした、ピュアなアルコール分だけを抽出したお酒です。日本酒がもつ、時間が経つほど劣化してしまい輸出にも長期保存にも向かないという消費期限問題を、極限まで熱をかけない「低温浄溜」という製法で解決しました。これにより、日本酒の風味や旨味を生かしたまま、長期熟成に耐えうるものが完成しました。ウイスキーやワインに並ぶ新ジャンルのお酒を目指しています。

そして2021年、三作目のお酒として「琥珀浄酎」(こはくじょうちゅう)をリリースしました。久比・三角島で育てたミカドレモンと浄酎をかけ合わせ、オーク樽で熟成したウイスキーのような色合い・味わいを持つ熟成酒です。琥珀浄酎の先行販売時にはMakuakeでのクラウドファンディングを実施し、45日間で841万円(目標の280%)を集め、多くの注目を集めました。ナオライ創業のきっかけである、久比・三角島のレモンと、日本酒の課題から生まれた浄酎とがコラボレーションした、まさにナオライ6年の積み重ねの結果です。

「浄酎」や「琥珀浄酎」の製造にあたっては、(カット)広島県内にある酒造と提携し、オーガニックの食米を使った純米酒を、広島県の神石高原町にあるナオライの酒蔵で浄酎にしています。神石高原では事例のようにナオライの事業をきっかけに地域の酒蔵さんやファーマーの方と繋がり世界に展開していくことを進めています。三宅さんはこのような拠点を全国に8拠点作ることを目指しています。まさに、SUSANOOの教えにあった「その人にしかできないこと」として、全国各地の名産品を使った日本酒を造り、地域に貢献することを目指しているといいます。

自分にしか見えていないものを大切に

三宅さんの起業のきっかけは、小さい頃から日本酒業界を身近に感じてきたことで、課題が見えていたことでした。今ではナオライには、志を同じくする役員・社員・パートナーメンバーが14名(2021年5月時点)おり、不定期で大学生のインターンの受け入れを行っています。きっかけは違えど、「自然や歴史を紡ぐ日本酒酒蔵を大事だと思える人」が集まるナオライ。ナオライでは現在、浄酎・琥珀浄酎の製造のほか、お客様と酒蔵をつないでオリジナル酒の醸造を行うYAOROZU事業、日本酒によるコミュニティ創出事業を行っています。

またナオライでは、琥珀浄酎やMIKADO LEMONはの売上の一部をレモンの苗木の植樹に還元することで、久比・三角島で増加している耕作放棄地をレモン農園として再活用することを目指しています。2025年までに1万本のレモンの木を植え、地元のレモン農家さんとともに久比・三角島に「オーガニックレモンバレー」をつくることが目標の一つだといいます。三宅さんは「お酒を造り、レモン農園が広がるほど、人の営みが自然や生物と調和する世界にできるような酒造りを目指し、持続的な経済や暮らしを自分たちで造り上げていくモデルを、久比・三角島から確立させることを目指している」と展望を語ります。

最後に三宅さんに、立命館の学生・生徒に向けてメッセージを頂きました。
「僕にとって、自分にしか見えていないなと思う社会課題は『日本酒業界の衰退』でした。そんな課題をもっと突き詰めて、それを強く深くしていけば、いつか大多数の課題になります。そんな突き詰めた先に起業があり、課題を解決したいという強い思いにはいい仲間が集まります。大事なのは、いかに自分にしか見えていない価値、課題を大切にするかです。自分が大切にしたいことを軸に、どんどんトライしてほしいと思います」

日本酒業界を変え、守る、三宅さんの挑戦は、これからも続きます。


PROFILE

三宅 紘一郎 さん

1983年生まれ広島県呉市出身。親族が酒蔵関係者が多く、幼いころから日本酒に興味を持つ。立命館大学時代は日本酒を中国で広げたいと上海交通大学へ交換留学。その後20代の9年間を上海で過ごし日本酒を売り歩く。2014年東京でソーシャルスタートアップアクセラレータープログラムSUSANOOと出会いナオライを創業。ナオライ創業メンバーと参加したインドネシア・ウブドのスタディツアーで体感した自然と人が調和した世の中に未来を感じる。「人、自然、微生物、すべての命が尊重され調和されている醸された世の中」を日本酒を通じて表現する。2019年一般社団法人まめな共同代表理事に就任。

ナオライ株式会社 https://naorai.co/

2015年創業の日本酒酒蔵再生スタートアップ。「多様で豊かな日本酒文化を未来に引き継ぐ」をテーマに日本各地の日本酒蔵元との連携事業を行う。瀬戸内海に浮かぶ人口約21名の離島・三角島に本拠地を置き、「時をためて、人と社会を醸す」というビジョンを実現するため、日本酒由来の「浄酎-PurifiedSpirit」や「MIKADOLEMON」を開発し、日本酒酒蔵の多様性を未来に引き継ぐための事業を展開している。2021年三作目となるお酒「琥珀浄酎-SAKE Zest Spirit」はクラウドファンディングで684名から841万3420円の支援が集まる。浄酎-PurifiedSpiritは
世界的な酒類品評会である「International Spirits Challenge 2021」の「Liqueurs & Specialities」部門において銀賞を受賞。


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