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RSIF社会起業家インタビュー#7:株式会社ARK・竹之下航洋さん「陸上養殖の新たな形で漁業の可能性を広げる」

RSIF社会起業家インタビュー#7:株式会社ARK・竹之下航洋さん「陸上養殖の新たな形で漁業の可能性を広げる」

こんにちは、RIMIX事務局です。

RIMIXでは、学校法人立命館の学園ビジョン2030「挑戦をもっと自由に」の具現化の一つとして、新たな事業を通じた社会課題解決の挑戦を支援することを目的に、2020年度に「RSIF(立命館ソーシャルインパクトファンド, Ritsumeikan Social Impact Fund)」を設立しました。
立命館学園の学生・卒業生(校友)や教職員の起業や事業を支援し、社会起業家のエコシステム・プラットフォームを目指します。

「RSIF社会起業家インタビュー」では、RSIFの投資先である企業で活躍する社会起業家にインタビューを行います。
第7回となる今回は、どこでも誰でも陸上養殖ができるシステム開発に成功した、株式会社ARK 代表取締役の竹之下航洋さん(立命館大学理工学部卒)にお話を伺いました。「陸上養殖の民主化」を掲げ、陸上養殖の観点から持続可能な漁業システムの確立を目指しています。

 


 

陸上養殖に取り組まれている「株式会社ARK」。
株式会社ARKを立ち上げた、株式会社ARK・CEOの竹之下航洋さん(立命館大学理工学部卒)に、起業の背景や事業で目指す未来について、お話を伺いました。

陸上養殖の新たなカタチ「ARK」とは

株式会社ARKは、駐車場1台分の大きさでコンテナのような見た目をしている「ARK(製品名)」の開発に成功しました。ARKを使って、陸上養殖をするという仕組みです。

ARKは、ただ小さいではなく、陸上養殖の自動化・loT化を実装しており、餌や種苗など必要資源とともにリモート管理アプリも連動しています。そのため、誰でも養殖に携われることができるという仕組みになっています。「魚の目を見て餌をやる」といわれる複雑な養殖業を、誰でも取り組める事業に転換し、水道の引き込みが要らず、省エネ化にも成功しました。

なぜ、「陸上養殖」なのか

なぜ、陸上養殖に取り組もうとしたのでしょうか。

竹之下さんは、現在の漁業が抱える問題点を指摘します。現在、世界的な人口増加に伴う、食糧危機が懸念されています。今の状態のまま、漁獲量を増やし続けてしまうと、世界中で魚介類の減少が進んでしまいます。そのため、竹之下さんは、「海を休ませる」必要性を訴えます。そして、漁業は、食糧危機だけでなく気候変動という課題にも直面しています。気候変動により、海に二酸化炭素が多く含まれ「酸性」に近づいたり、海流の変化が起こったり、今までと獲れる魚の種類が変わってきつつあります。

そうした状況の中で、世界的に「養殖」に注目が集まるようになりました。しかし、「養殖」も多くの問題点を抱えており、生産量の観点からみても「頭打ち」の状態にあるといえます。まず、海面養殖は、できる土地がリアス式海岸などに限られているだけではなく、海面養殖に対応できる魚介類も限られています。現在、行われている「陸上養殖」も、多額の設備投資を伴う大きな設備が必要で、エネルギーも多く使う必要があります。これらの社会問題を解決すべく、竹之下さんは、ARKの開発に取り掛かりました。

「ARK」が示す、新しい可能性

そのような社会問題を開発すべく、誕生したARK。現在は、新たな側面での可能性も示しています。

例えば、新鮮な状態での活魚の提供です。ARKは、どこでも誰でも陸上養殖ができるのが魅力です。そのため、より新鮮な状態での活魚を消費者や店舗に届ける事ができます。このような取り組みは、地産地消にもつながるといえます。この特性をいかし、将来的なグランピング施設との連携なども期待できます。

そして、ARKは、「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにするトレーサビリティという観点からも優れている設備です。そのため、食の安全を追求する事ができます。食の安全に関心の高い、ヨーロッパ市場にも進出していきたいと、竹之下さんは語っていました。

福島・浪江町と歩き出した「ARK」

現在、J R東日本と協力して、福島県浪江町でのバナメエビの養殖を、2022年2月より「JR常磐線浪江駅」にて開始しています。

まさに、小型で自動化に成功したA R Kの特徴を最大限に活かした取り組みです。JR東日本と連携することで、安定した食料供給を狙っています。

浪江町は、東日本大震災による甚大な被害を受けた土地で、福島第一原子力発電から近いところに位置しています。原発事故後の帰還率も1割程度にとどまっています。竹之下さんは、そのような状況の浪江町で、地場産業を育みたいとARKに希望を託します。

竹之下さんの学生時代

竹之下さんは、高専出身で立命館大学理工学部に編入したという経歴です。高専では、ロボティクスなどの技術を学ばれていました。

なぜ、編入する大学として、立命館大学を選んだのでしょうか。立命館大学を選んだ理由は、当時、経営学部と理工学部が同じ「びわこ・くさつキャンパス(BKC)」に立地していたことを挙げています。当時から、竹之下さんは、エンジニア視点で社会問題解決に携わりたいと思っており、起業に憧れを抱いていました。そのため、経営学部も、同じキャンパスに併設されていた立命館大学を選んだそうです。学生時代は、理工学部で専門的な技術に関する知識を学ぶ傍ら、経営の学習の一環としてベンチャービジネスに関するサークルに所属していたそうです。ロボティクスなどの技術だけでなく、経営に関する知識も学んだ経験が、現在も役に立っているといいます。

竹之下さんが見つけた人生課題

大学時代や大学院時代に、自身がキャリアの中で解決したい、明確な「目標」を見つける事ができず、就職しました。しかし、IoTサービスを提供する企業で働いていた際、陸上養殖のセンシング事業に携わり、転機が訪れました。現状の陸上養殖が抱える課題と陸上養殖が秘めている可能性に気づいたのです。10年以上、一緒に働いていた吉田勇さんと社会課題解決に向けて話し合っていきました。吉田さんは水道設備業やエンジニア、スタートアップと大手メーカーでの営業など多彩なバックグラウンドを持ち、現在は製造や成育分野でARKに貢献しています。そこに、海外経験豊富で広告代理店で働いていた栗原さんを加え、3名でARKを生み出しました。多様な3人の特色を生かし、わずか設立から1年ほどでBBC(英国放送協会)に取り上げられ、J R東日本との共同プログラム実施にたどり着きました。

学生へのメッセージ

現役の大学生へのメッセージを竹之下さんからいただきました。

立命館大学が持つ「仕組み(留学プログラムや設備など)」を最大限に使い倒すこと。そして、立命館大学の多様性を生かし、さまざまな人と会うこと。そのなかで、見聞を広げ、人生の目標を見つけることを学生へのアドバイスとしていただきました。目的や意図を持って行動することで、将来、自分のキャリアでしたいことを見つける事ができるのではないかとのことです。


PROFILE

竹之下航洋さん
株式会社ARK Co-founder, CEO

1981年生まれ。鹿児島県鹿屋市出身。高専にて電子制御工学、メカトロニクスを学んだ後、立命館大学に編入しロボティクス及びBio Medical Engineeringを専攻(工学修士)。卒業後は一貫してHWスタートアップに身を置き、製品の企画・開発・生産技術等を担当。IoTに関する著書及び特許多数。2016年より(株)ウフルに参画し、エバンジェリストや技術責任者等を歴任。2020年にARKを共同創業し、代表に就任。好きな魚はアジ。

株式会社ARK https://www.ark.inc/

株式会社ARKは、「養殖の民主化」ミッションに掲げ、閉鎖循環式陸上養殖システム及び付帯サービスの開発や提供を通して食糧危機等の社会課題解決に貢献します。2021年からは、「立命館ソーシャルインパクト投資事業有限責任組合」も株主として参画しています。現在は、J R東日本様と協力して福島県浪江町での実証実験等を行っています。
今後は、世界中のあらゆる地域に当社製品の「ARK」が設置され、各地域に新たな産業が興る、その担い手となることを目指します。

 

INTERVIEW

若林 和(立命館大学産業社会学部3年)

長崎平和学習や在米日本人への取材をきっかけに、「社会の分断」に危機感を覚え、記者を志す。ミニシアターでの映画鑑賞や京都市議会議員のもとでのインターンをきっかけに、現在は、在日外国人などのマイノリティ取材や政治取材に関心がある。またカンボジア支援団体の代表を務め、コロナ禍の中でも、カンボジアの子どもたちの支援にも精力的に活動をしている。趣味は、サッカー観戦と居酒屋巡り。

川村幸生(立命館大学薬学部6回生)

幼少期のスリランカ訪問の経験から新興国支援に関心を抱き、大学入学後、同地域への教育支援活動を行う。コロナウイルスを契機に《予防医療》に興味を持ち、ヘルスケアの重要性を広めることを目指す。現在は、「食事療法による疾病の悪性化予防」についての研究活動や社会的投資や大学発のソーシャルインパクトファンドに関わるインターンを行っている。卒業後は製薬企業に就職予定。趣味はスポーツ観戦と山登り。

 

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