OIC CONNÉCT HAPPEN #3|守山市役所 杉本悠太さん

立命館とVenture Café Tokyoが毎月1回、立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で開催しているイノベーション促進プログラムOIC CONNÉCTは、「イノベーションは社会とつながるキャンパスから」をコンセプトに、新しい挑戦をしたくなるような機会を提供し、イノベーション・コミュニティを創出することを目指しています。OIC CONNÉCT、そしてVenture Café が大切にするミッションは“Connecting Innovators to Make Things Happen.” OIC CONNÉCTで生まれた新たなできごと“HAPPEN”を参加者や関係者へのインタビューからご紹介します!

第3回となる今回は、守山市 都市経済部 企業連携室係長の杉本悠太さんにお話を伺いました。行政の方はなぜこのイベントに来るのか、参加をきっかけに何が生まれたのか深堀りします。


OIC CONNÉCT #22 の様子

 滋賀県・守山市役所で官民連携を推進する専門課・企業連携室で係長を務める杉本悠太さん。滋賀県湖南市出身で、銀行から転職し、守山市に入庁して10年になるといいます。

 仕事の中でOIC CONNÉCTの関係者に出会い、2022年末に初参加。OIC CONNÉCTの運営陣や参加者などとネットワーキングをする中、守山市が目指す「起業家の集まるまち」への取り組みや企業連携による課題解決の取り組みに運営陣が注目し、OIC CONNÉCT #7(2023年3月開催)のセッションで杉本さんの登壇が決定。イベントの様子や雰囲気を深く知りたいと、2月に再び現地参加した際、今回の“HAPPEN”でも深く関わってくる、QUINTBRIDGEの下川哲平さんと出会ったといいます。

首長自ら選んだ課題を、首長自らピッチ

 2023年11月18日、NTT西日本が運営するオープンイノベーション施設・QUINTBRIDGE(大阪市都島区)にて「首長ピッチ / もりやまシードチャレンジピッチ」が開催されました。首長ピッチとは、滋賀県守山市、奈良県三宅町、香川県東かがわ市、人口も状況も異なる3つの市町による合同自治体ピッチで、それぞれの市長・町長がマイクを握りました。ピッチ内容は「首長自ら選んだ課題」。当日は各市町の解像度の高い課題を、参加者に向けて首長自ら発信されました。当日は、守山市内の高校生が、まちの課題を見える化&ワークショップを重ね磨き上げた課題のタネをピッチする「もりやまシードチャレンジピッチ」も同時開催しました。

2023年11月18日にQUINTBRIDGEで開催した「首長ピッチ / もりやまシードチャレンジピッチ」の様子

 開催のきっかけは、OIC CONNÉCT#6(2023年2月開催)にて行われたトークセッション「イノベーションの足掛かりとなる『事業共創のススメ』」に登壇されていた、NTT西日本/QUINTBRIDGE オープンイノベーションデザイナーの下川哲平さんとの出会いだと、杉本さんは話します。

 下川さんが登壇するセッションの内容に衝撃を受け、終了後すぐに話しかけに行き、そのまま2人は一緒に帰る流れとなって2人は意気投合。「守山市とQUINTBRIDGE、連携して何かやりたい!」という話になり、翌月の年度初め、杉本さんはすぐに下川さんに連絡。そこから連携の話は一気に進みました。

 首長ピッチは守山市、三宅町、東かがわ市の3市町連携イベントです。なぜ滋賀県、奈良県、香川県という3つの県の市町が連携するに至ったのでしょうか。
 それは、この3市町が連携することで実証実験の横展開が可能だったからです。この3市町は、それぞれ自治体規模が異なる地域でしたが、課題が限定されていました。最初に連携を決めた三宅町は人口が減少傾向にあり、全国で2番目に小さい町です。一方で守山市は人口は増加傾向にありますが、それに伴い待機児童問題などの課題も発生しています。守山市と三宅町は、関西で人口が増加傾向にある地域と減少傾向にある地域でした。杉本さんはさらにエリアを変えて同じような課題を抱いている市はないかと考え、次に連携するに至ったのが四国にて人口が減少傾向にあった東かがわ市です。

 杉本さんは「自治体規模は異なるが課題が限定されている3市町で、解決のための同一サービスを同時に社会実験できる。市町は互いに情報交換が出来るし、イベントに参加してくれた企業や学生からしても課題が限定されているためわかりやすいと思いました」と話します。

 こうして開催された「首長ピッチ」ですが、首長がQUINTBRIDGEでピッチするのはQUINTBRIDGE史上初。集客に関しても、土日において過去最高レベルの人数が来場したそうです。

金融から行政へ 三方よしの精神

 2005年、同志社大学の経済学部を卒業し、金融の道へ。銀行にて約10年間、法人営業や経営改善支援等に携わってきた杉本さん。当時は「モノをつくる側に回りたい」という想いもあったそうです。お客さんのために、経済のために、地域のために働きたいというモチベーションは誰よりもありましたが、「モノづくりのスキルはなかった」と自身で振り返ります。そこで杉本さんは「モノをつくるスキルがないならコトをつくる側に回ろう」と考え、政策(コト)によって人の生活に密着し、自分の想いも実現できる行政へ進むことを決めました。

 今回の首長ピッチというプロジェクトは、企画されてから約3か月程で開催に至るというスピーディーさがありました。行政関連のプロジェクトといえば、立案や決裁に時間がかかるといったイメージがありますが、なぜ今回こんなにも速くプロジェクトが実現したのでしょうか。その問いに杉本さんは「“三方よし”を常に意識している」と答えます。多くの取引先の“お困りごと”を解決していた銀行員時代の経験が活きているそうです。

 首長ピッチのケースであれば、運営者・登壇者・オーディエンスの三方を意識します。会場運営者には「開催して良かった」と、登壇者には「出て良かった」と、オーディエンスには「来て良かった」と思ってもらう。そのために必要なものを予め計算し、準備を始めます。

「この段階でお金はいりません。必要なのは“調整”だけです」

 杉本さんはそう言います。お金よりも先に、三方よしの実現を優先し、必要なものを調整していく。それがプロジェクトをスピーディーに行う秘訣だと語ります。

守山市を実証実験のフィールドに!

 滋賀県守山市は「起業家の集まるまち守山」をキーワードに掲げ、スタートアップや企業の取り組みを後押しし、官民連携により事業の実施やオープンイノベーションの推進に積極的に取り組んでいます。また、2024年2月には「滋賀からスタートアップ機運を創り出す」をコンセプトにした「up stream day」が開催され、起業家、支援期間、学生などを含む200人超が参加しました。

 守山市は今後「守山市を実証実験のフィールドに!」というメッセージとともに、官民連携をさらに推進していくことを市長の森中高史氏が明言。そのため守山市は、今後飛躍的な成長が期待されるスタートアップから大企業までを対象に、実証実験のフィールドを提供し、実施する際に各種支援を行う守山市官民連携プロジェクトサポート事業の実施を6月に発表しました。多様に変化する市の地域課題や社会課題の解決による市民サービスの向上、イノベーション創出による産業振興、地域活性化に資することを目指していきます。

行政職員からみたOIC CONNÉCTの魅力とは

OIC CONNÉCTのネットワーキングの様子

最後に、杉本さんに行政・自治体の人から見たOIC CONNÉCTの魅力を伺いました。

会いたい人にすぐに会えることです。OIC CONNÉCTに行けば、スタートアップや官民連携に携わっており、その方面に理解がある大学職員や先生などにすぐ、いきなり会うことが出来ます。また、イベント自体がコネクト(繋がる)を大事にしているように、自分の会いたい業種・職種の人が決まっている場合、運営の方から色々と紹介してくれるケースもあります。それが魅力だと感じています。外に出て繋がりをつくったり、ネットワーキングをしたりが得意ではない方でもOIC CONNÉCTはぴったりの場所だと思います。飛び込んでみて、情報を集めて、多くの方とネットワーキングをしましょう!

杉本さん、ありがとうございました!


\次回のOIC CONNÉCTは/

次回のOIC CONNÉCT#23は「食の未来カンファレンス」。食の未来プロジェクトとOIC CONNÉCTが連携した特別回となっております!会場でお待ちしております!

PROFILE

杉本 悠太 Yuta SUGIMOTO

1983年生まれ、滋賀県湖南市出身・在住。2005年同志社大学経済学部卒業後、株式会社滋賀銀行へ入行。法人営業や経営改善支援等に従事した後、2014年に守山市役所に転職。2015年より地方創生の分野を担当し、2019年からは第二期の柱として新たに「起業家の集まるまち」の立ち上げを主担当として行う。2024年より官民連携を推進する専門課「企業連携室」が創設され、同室係長を務める。

OIC CONNÉCT HAPPENチーム

平田 康介(#旅行に行きたい)

立命館大学経営学部4年生(休学中)。OIC CONNÉCT 学生チーフアンバサダー。
介護現場での勤務経験がある父との会話をきっかけに、介護施設の食事摂取量管理の課題を解決するサービス「めしパシャ」を発案。事業化に向けて取り組みながら複数のビジネスコンテストで受賞。当初は就職希望で就活を勧めていたが、めしパシャの立ち上げに注力したいという思いから令和6年度の休学を決める。

吉田 航大(#絶賛就職活動中)

立命館大学 経営学部 4年生。OIC CONNÉCT 学生リードアンバサダー。 
全ての人が過ごしやすいユニバーサルな社会の実現を目指す「バリア体験型カフェ」を運営する学生団体feelの副代表を務める。

菅原 龍佑(#好きな言葉は「食べ放題」)

立命館大学経営学部2年生。OIC CONNÉCT 学生アンバサダー。
「100年後も”住める地球”と”食の幸せ”」を掲げ、WITH USコネクトの代表として活動中。究極の大豆ミート『罪なきハンバーグ』の取り扱いやアスリート向け補給食の開発を行っている。きっかけは母がいつのお弁当に入れてくれていた、ハートの卵焼き♪


OIC CONNÉCTの雰囲気を知りたい方はInstagramをご覧ください!

OIC CONNÉCT

OIC CONNÉCTは、学校法人立命館が主催し、Venture Café Tokyoが立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で毎月1回開催する、誰もが無料で参加可能なイノベーション促進プログラムです。

これまでOICが培ってきた「地域に開かれたキャンパス」の特徴をさらに進化させ、大学の枠を超えた「ヒト・コト・モノがより触発しあうキャンパス」を目指す取り組みの一貫として開催していきます。

このプログラムは毎月開催することで、起業家や研究者、学生など多様な人が交流し、学び合う機会の提供を通じ、関西を中心としたイノベーション・コミュニティを創出することを目指します。多様なイノベーター達による講演やイノベーションを加速させるワークショップ等を通じて参加者は学びを得ながら、そこで得た共体験を梃子にネットワークを拡げることが出来ます。

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